防衛費は増やすべきだが、「優先順位」を考えて議論を

 …と言う話を聞くと、「こいつは反戦左翼でとにかく防衛費増額に反対するためにこんなデタラメを吹聴しているのだな」と不快になられる方も多いだろうが、筆者は防衛費を増やしていくことには特に異論はない。

 あまりにも語られることが少ないが、実は日本の人口減少によって、自衛隊はずっと「定員割れ」が続いている。さすがにこればっかりは「外国人労働者を増やせば解決」というわけにはいかないので、入隊できる年齢を引き上げてなんとかしのいでいるが、これから深刻な“国防力不足”が到来することは間違いない。

 そうなったら、現場の負担を軽減するためにも、今回の戦争でも注目される無人ドローンやAIというハイテクで補完していくしかないので、当然それなりの予算をつけていくしかない。自衛隊が、人が減っているのにやたらと高い理想を掲げるブラック企業のようになり下がったら、国防もへったくれもない。

 そのように防衛費増額はいい。ただ、「優先順位」が違うのではないかと申し上げているだけだ。

 防衛費を急にドカンと上げたり、核共有議論が盛り上がったりすると当然、中国やロシアからすれば「おいおい、なに挑発してくれてんだよ」と一気に臨戦態勢になる。

 こちらは「防衛」のつもりでも、緊張関係にある国からすれば、けんかを売っているように取られることも多い。ウクライナのゼレンスキー大統領が、分離独立派が支配する地域にドローンを飛ばしたり、NATO(北大西洋条約機構)入りを切望したりしたことを、プーチンが「度重なる侵略行為」ととったのと同じである。

 相手が間違っている、狂っている、と批判するのは簡単だが、互いに背負っているものが違うので、ここは絶対に譲歩できない部分でもあるのだ。

 だから、そのように緊張と対立をエスカレートさせるようなことに踏み切る前に、まずは国を守るために必要不可欠な「エネルギーと食料の自給自足」を、もっと向上させることに全力を注いだ方がいいのはないか、と言いたいのである。

 なぜ筆者がそう考えるのかというと、実際に戦争が身近にあった時代、どうすれば日本は勝てるのか、生き残れるのかということを考えていた先人たちは、そのような結論を出したからだ。