上場する社数を絞っても
株価が上がるとは考えられない
4月に東京証券取引所の大改革が実施された。コーポレートガバナンス改革において、株式市場や株主の役割は大きいゆえに、注目度は高い。しかし、一連の動きに対して、市場関係者やマスコミから「市場改革は骨抜きだ」といった批判的な声がある。以下、東証改革に関連して、日本のガバナンス改革の課題について検討する。
今回の東証改革は、大きく二つに分かれる。第一に、東証の市場区分を整理することである。従来、東証一部、二部、マザーズ、JASDAQスタンダード、JASDAQグロースの5区分であった現物市場を、プライム、スタンダード、グロースの3区分に再編した。
プライム市場は、高い時価総額・流動性、高度なガバナンスを備える企業で構成される。東証一部2176社(3月末時点)のうち、1839社(85%)の企業がプライム市場に移行した。スタンダード市場は1467社、グロース市場は466社である(4月7日時点)。今後、新たに上場する企業は、流通時価総額などの上場・退出基準を厳格化する。
第二に、東証株価指数(TOPIX)の構成銘柄ルールの変更である。TOPIXの銘柄数は今年3月末時点で2176と多く、流動性の低い小型株を多く含むため、インデックス・ファンドのベンチマークとして適切でないという指摘がある。
TOPIXの新算出ルールは、構成銘柄は流通時価総額100億円をめどとし、主にプライム市場から選定される。今年4月1日時点の旧TOPIX構成銘柄を、市場区分にかかわらず継続採用するが、流通時価総額100億円などの基準を満たさない企業は2025年までに段階的に除外される。ただ、除外される銘柄の時価総額の合計額は小さいため、新旧指数の騰落率の差は、それほど生じないだろう。
これらに対する批判の代表例は、「プライム市場の企業の数が多すぎて、玉石混交である。上場基準を厳しくして、衰退企業を市場から退出させるべきだ」というものである。しかし筆者には、上場社数を絞っても、日本企業の成長力が高まって株価が上がるとは考えられない。なぜか。