インフレで高まる中央銀行への関心、大衆心理が金融政策の見直し迫るPhoto:PIXTA

コロナ禍からの回復、ロシアのウクライナ侵攻で世界的にインフレ圧力が高まり、人々の関心が金融政策に向かいつつある。大衆心理の変化がこれまでの金融政策の在り方の見直しを迫ることになるだろう。(BNPパリバ証券経済調査本部長チーフエコノミスト 河野龍太郎)

インフレの昂進で高まる
中央銀行への関心

 グリーンスパン元FRB(米連邦準備制度理事会)議長は、物価安定を、「物価の変動が十分小さく、かつ、十分緩やかなため、家計や企業の意思決定において物価が事実上考慮されない状態」と定義した。

 この見事な定義に、各国の中央銀行も従った。物価の変動に惑わされず、生活に専念できる状況なら、人々は物価にも物価安定の責務を担う中央銀行にも、関心を失う。中央銀行を意識するのは、直接の影響を受ける金融市場参加者だけとなる。

 しかるに、コロナ禍の影響でインフレが高騰している米国では、国民の関心は一気にFRBに向かっている。かたや日本では、日銀への国民の関心は極めて薄いままだだった。これは、物価安定が保たれ、金融政策の成功と考える人もいた。

 しかし、コモディティー高や円安で輸入物価が高騰を続け、にわかに日銀への関心が一気に高まってきた。本稿では、金融政策に大きな影響をもたらす人々の「関心」についてフォーカスし、次ページからもたらされるであろう具体的な変化を解説する。