しかし、来場客は減るどころか増えていった。販売の現場は、内覧時間をずらせば家族以外と一緒になることもない。新築物件の内覧は安全で、エンターテインメント性のある家族サービスの様相を呈した。また、家で時間があるので、客はネットで物件情報やVR(仮想現実)を使ったバーチャル内覧で隅々まで見回し、現地はイメージと違わないことを確認できるようになっていった。

コロナ特需は終焉

 このコロナ特需は終焉を迎えつつある。これは以前にもこの連載で指摘しているが、外出制限が続く中で家を探すことは、予約制で行うことができたらからこそ起きた現象でもある。家を買うために費やす時間は土日に集中する。不動産業者が、水曜など平日に2日休みなのもその理由からだ。

 まん延防止等重点措置が解除されたが、新規感染者は高水準が続いている。しかし、1カ月以上続くこの状態に私たちは慣れてしまい、行動制限をしなくなっている。これまでの鬱憤(うっぷん)を晴らすかのように、外出するのが当たり前になっている。

 土日祝日を利用してレジャーや旅行に行く人が増えると、住宅需要は減らざるを得ない。1カ月間に休みが10日あるとすれば、これまでは外食にも実家にも観光にも旅行にも行けなかったので、まるまる10日間を住宅購入に割くことができた。しかし、外出する機会が増え、その住宅需要に陰りが見られるようになった。

 住宅は気持ちが冷めると、優先順位が圏外に落ちるものだ。それは、増税前の駆け込み需要とその反動減が、過去に何度も起きたことが証明してくれている。結婚や出産、入学というトリガーに端を発する一定の持ち家需要はコンスタントにあるものの、「みんながやっているから」的な浮かれた需要も多いのが住宅需要なのだ。

 コロナ特需の終了は、数字にも表れ始めている。新築分譲マンションの月間の販売額は、最初の緊急事態宣言が出た2020年4~6月期は、販売センターを閉めたことなどから前年同期比で56%、その後四半期ごとに売れ行きは改善し、105%、131%、142%となった。前年同期が少なかった21年4~6月期は251%だったが、その後は116%、126%と収束に向かい、22年1~2月期は102%となり、上昇基調は終わった。

 中古マンションも同様の動きを示す。2020年4~6月期は前年同期比で67%、その後四半期ごとに売れ行きは改善し、107%、118%、119%となった。前年が少なかった21年4~6月期は176%、その後98%、106%と収束に向かい、22年1~2月期は89%となっている。在庫戸数も21年7月に底を打ち、増加してきている。

 新築分譲戸建ての在庫に対する契約する戸数の割合も下がり、在庫価格と成約価格の値引き幅も拡大している。中古戸建ても在庫が増加し始めており、新築同様の売れ行きである。注文戸建ても展示場への来場者が減り始め、受注戸数も減り始めている。