メイクがバレるとその場でクレンジング!
ブラックな行き過ぎ指導

 次に、日本全国の学校で実在した/実在する「指導方法に大きな問題があるもの」について紹介していこう。校則自体はブラックではなくても、指導の仕方によってはたちまちブラック校則になってしまうのだ。

(1) 校則を破ると写経!部活動禁止!

 ブラック校則について意見を聞いた際、校則を破ったときの罰がブラックだったという意見も多く聞かれた。「仏教学校だったので校則違反をすると写経をさせられた。違反の重さによって枚数が変わりました」という一風変わったものや、「校門が午後6時に閉まる。部活が終わるのが遅れるとアウト、先生にどの部活の生徒かを控えられてしまう。連帯責任で、一定回数名前が挙がった部活は部活動禁止に」という連帯責任を課すことで圧力をかけるものまで、さまざまな罰則が存在している。

(2) その場で見せしめ指導!

 校則を守っているかどうかのチェックが頻繁かつ抜き打ちで行われ、他の生徒への見せしめを兼ねた指導を行っている場合もブラックだといえるだろう。「メイクしているのがバレると、先生の持っているクレンジングでその場でメイク落としさせられる」「整髪料は禁止だけど、前髪をジェルで固めるのがはやってた。部活の合宿で早起きしてキメた友達は、朝食時に先生に見つかって泣きながら髪を洗うハメに……」「髪を染めているのを、髪色を黒くするスプレーでごまかそうとした子は、トイレに連行されて手洗い場で頭を洗われていた」など、学校によっては羞恥心をあおるような見せしめ指導が行われることもあるようだ。

(3) 爪は常に深爪!?校則通りなのに説教?

 校則に従ってしゃくし定規に指導したり、独自の解釈で指導をしたりする学校や先生もブラック度は高い。「手のひら側から見て爪先の白い部分がちょっとでも見えていたらNGなので、常に深爪にしていた」「校則通りなのに、スカート丈が短すぎると繰り返し指導された。廊下で跪かされたり、教卓の前に立たされて長さを測られたりした挙句、校則で想定しているよりも露出が多いので背が高いヤツはスカート丈を長めに調整しろ、と。一体何なの」など、理不尽で行き過ぎた指導を指摘する声も。

在学中は「ブラック」だと
気付かない

 ブラック校則の怖いところは、学校という枠の中にいる間はその規則が「理不尽である」「ブラックである」と認識しにくいという点だ。

 例えば、天然パーマだった著者は、中学生のときに教師から「うちの学校はパーマ禁止だから、ストレートパーマをかけたらどうだ?」と言われたことがある。パーマ禁止だからパーマをかけろとは何とも理不尽極まりない。だが、まだたった十数年しか生きていなかった当時は、先生の言い分を理不尽とも思わずに真剣に悩んだものだ。

 ブラック校則は果たしてどのような経緯で注目を集めるに至り、今のように活発な議論が交わされたり、意見が寄せられたり、見直しが進められるようになったのだろうか。

ブラック校則議論のきっかけに
「髪黒染め訴訟」とは?

 ブラック校則が取り沙汰されるようになったのは、2017年9月に大阪府で起きた髪黒染め訴訟がきっかけといわれている。茶色い髪を黒く染めるように何度も指導・強要されて不登校になったとして、女性が大阪府を相手に損害賠償を求める訴訟を起こしたのだ。

 原告となった女性は生まれつき髪が茶色いことを母親が入学時に学校側に説明したにもかかわらず、髪を黒く染めることを強要されたという。女性側の主張によると、学校側は「金髪の外国人留学生でも規則通り黒く染めさせる」と説明したとされている。

 大阪地裁は、女性が不登校になった後に学校側が行った「学級名簿に名前を載せない」「教室に席を置かない」という学校側の行為を「著しく相当性を欠く」として大阪府に33万円の賠償を命じたものの、染色を禁じる校則や教師の頭髪指導については適法とした。二審でも一審の判決が支持され、原告の女性は最高裁に上告している。

髪黒染め訴訟を機に
「ブラック校則」認知度が急上昇

 この訴訟は海外でも複数のメディアが報道するなど、国内外の注目を集めた。これを機にネット上で「トイレ掃除は素手でする」など理不尽なブラック校則の報告が相次ぎ、ブラック校則のブラックさ加減がようやく世間に認知され始めたのである。

 大阪府は同年11月に「頭髪指導に関するアンケート調査」の結果を公表、過去に定められたまま定期的な見直しがされておらず実態に合っていない校則もあったとして、12月に全府立学校を対象に校則等の点検・見直しを指示した。その結果、府は2018年4月に「校則等の点検・見直しに関する調査公表について」で、約3割の府立学校で文言の修正や削除が行われたと公表している。