Excelの勉強に取り組み、さまざまな関数を覚えたという読者は多いだろう。だが、本当の意味でExcelに習熟するには、個々の関数の「組み合わせ方」もマスターする必要がある。そのために必要な考え方と、「FIND関数」「IF関数」の実用的なテクニックを、Excel講師・田中亨氏の著書『Excelの本当に正しい使い方』(日経BP)より一部抜粋・再編集してお届けする。
関数の“合わせ技”を学ぶ上で
欠かせない基礎知識をおさらいしよう
この記事では、関数の“合わせ技”でどんなことができるのかを見通していく。個々の関数を順番に覚える学習法では、本当の意味で関数を使えるようにはならない。なぜなら、関数は組み合わせて使うことで本領を発揮するからだ。賢く組み合わせて使うには、関数の働きをより広い視点で理解しておく必要がある。
Excelには500近い関数が用意されていて、メニューでは「財務」「統計」「数学/三角」「検索/行列」「論理」「エンジニアリング」…などの分類に整理されている。だがこの分類は、「こんな場面で使うことが多い」といった程度の意味しかないので、覚える必要はない。関数を探すときの参考になるかもしれないが、覚えたからといって関数を使えるようにはならない。
より重要なのは、関数はその働きによって3つに分けられるということ。すなわち、(1)値を返す関数、(2)セルを参照する関数、(3)計算を制御する関数の3種類だ(図1)。この3つの違いがわかると、個々の関数を学んだり使ったりする際にも、その働きをよく理解できるようになるし、「自分が何をしたいのか」に応じて、必要な関数を組み合わせられるようになる。
順番に見ていこう。(1)値を返す関数には、いわゆる計算をする関数が含まれる。合計を求めるSUM(サム)や、平均を求めるAVERAGE(アベレージ)、最大値を求めるMAX(マックス)など、計算対象を引数に指定すると、計算結果を値として返すものだ(図2)。計算だけでなく、文字列を切り出すLEFT(レフト)やRIGHT(ライト)、日付や時刻を求める関数などもこれに含まれる(図3)。
(2)セルを参照する関数は、別の場所にあるセルの内容を返す関数だ。関数の中でも人気の高いVLOOKUP(ブイルックアップ)などがこれに相当する(図4)。この関数は数値を計算したりデータを加工したりはしない。セルを参照して、その値を持ってくる働きをする。単なる数式と異なるのは、参照すべきセルを目的に応じて変えられる点にある。
(3)計算を制御する関数の代表格はIF(イフ)。有名なので、知っている人も多いだろう。図5の例は、C列の「500円引き適用」欄に「○」が付いている場合だけ500円引きの価格を計算し、それ以外は元の価格を表示するという“条件分岐”を実現したものだ。
計算を制御する関数を使うと、このように計算や処理の仕方を場面に応じて切り替えられる。ほかの関数による計算や処理も制御できるため、複数の関数を組み合わせて使うケースも多い。計算を制御する関数を使えるようになると、関数の応用力が格段にアップする。
なお、関数に指定する「引数」は、大別すると「値」と「セル」の2種類に分類できる。関数の式を引数に組み込んで、その結果の「値」や「セル」を利用することもできる。引数の名称は関数ごとに異なり、多種多様なものがあるが、「値」なのか「セル」なのかを意識することで、引数の指定を間違えたり、迷ったりすることはなくなるだろう(図6)。
関数の基本的な使い方や大まかな分類がわかったところで、より実践的な関数の使い方を紹介しよう。具体的には、「関数は組み合わせて使う」ということ。冒頭でも触れたが、関数は組み合わせてこそ本領を発揮する。この点を実例を交えて説明したい。