主役ではないが、実は主役を支え、引き立てる上で欠かせない名脇役ともいうべきか。段ボールなどの梱包材は、安全性や運びやすさ、強度や見栄えなど、中に入れる主役たる商品によって異なる素養が求められる。まさに百人百様といってもいい多様なニーズに合わせた包装資材製造を手がけ、顧客の支持を集めているのが岐阜県関市の三万だ。(取材・文/大沢玲子)
関市は日本一の刃物の町として知られ、同社も1971年、包丁専用ケースの製造・販売からスタート。その後、段ボール、化粧ケース(紙器)、緩衝材など品目を拡大していく。
2021年10月、3代目としてトップに就任した梶谷卓史氏は、業界の特性として、「段ボール一つ取ってもテープ貼付で組み立てる・みかん箱タイプ・と呼ばれるA式、ふたや底面を差し込んで組み立てるB式といった大枠の形式はありますが、正規のサイズの規格は存在しません。どう運び、どう店頭に並べ、どう見せたいかなどによって設計・製造法の工夫が必要となります」と語る。
多品種少量の注文に対応
顧客との信頼関係を構築
それぞれ得意分野、規模も異なる同業他社が存在する中、同社の強みは何か。梶谷氏は大きく二つのポイントを挙げる。
一つ目は多品種小ロット注文への対応だ。最もシンプルなA式の段ボールであれば、低コストでの大量生産が可能な大手や海外企業などに軍配が上がるだろうが、同社が得意とするのは顧客のニーズや商品に合わせた多品種少量の化粧箱や段ボールの製造だ。
「運搬法によって使用する段ボール資材を選択、箱の組み立てもワイヤー止めでなく糊付けにするなど細かいニーズに対応しています」と梶谷氏。
抜き型(トムソン加工)が必要で手間、コストがかかるB式についても、少量からさまざまな形状の包装資材製造に対応できるのは小回りの利く同社ならでは。
二つ目は顧客との密なコミュニケーションに注力していること。注文通りの包装資材を作るだけでなく、「中に入れる商品に合わせてゼロからデザインし、やりとりを経て改善を加えていくなどさまざまな注文をお受けしています」(梶谷氏)。