早期退職の嵐の中、50代が健康で幸せな人生をつかむ「6つの習慣」とは多くの会社員の足元が崩れ始めているなか、50歳前後のミドルはどうしたらいいのか(写真はイメージです) Photo:PIXTA

レビュー

 ひと昔前は、上場企業が早期退職者を募集すれば、それだけで社会的に大きなニュースになったものだ。ところがこの2年ほど、黒字リストラの話を聞いても驚く人はほとんどいないのではないか。会社は新型コロナウイルス感染症を隠れ蓑にしているが、著者によると、特に50歳前後のミドルの雇用をめぐるパラダイムはすでに大きくシフトしていたのだという。

『THE HOPE 50歳はどこへ消えた? 半径3メートルの幸福論』書影『THE HOPE 50歳はどこへ消えた? 半径3メートルの幸福論』 河合薫著 プレジデント社刊 1760円(税込)

「○○社の社員であること」を自身の第一のアイデンティティにする時代は終わりを告げたといえる。かわりに著者がすすめるのは、「半径3メートル世界のゆるいつながり」を大切にする生き方だ。家庭はもちろん職場や地域社会でもこうした生き方ができれば、役職定年や失職といった危機に遭遇しても良い意味づけを見出し、乗り越えられるだろう。

 本書『THE HOPE 50歳はどこへ消えた? 半径3メートルの幸福論』の主旨は、ミドルに向けた「変身 (transformation)のすすめ」であると要約者は理解した。その際の指針となるのが、幸せへの力=心理的ウェルビーイングの6つの思考だ。どの思考も本質的で大切にしたいものばかりだ。

 著者の主張を裏づける研究結果が数多く紹介されていて非常にわかりやすい。また、著者自身がインタビューしてきた会社員の声はリアリティに富む。そこから見えてくるのは、挫折や試練は人を強くし、豊かにするという点だ。生き方や働き方に迷いがあるならば、ぜひ本書を読み、希望を取り戻していただきたい。(しいたに)