定額制サービスからすると、
契約者の生死は分からない

 毎月、あるいは年単位で一定の支払いが発生する(お金が引き落とされる)という点では、最近増えているネットの各種サブスクリプションサービスも同じである。NHKにもサブスクリプションサービスにも、契約者の生死を自動で検知する仕組みは存在しない。継続支払いの設定になっているなら、遺族や代理人からの連絡がない限り、契約者の身に何が起きても変わらず支払いが続くのが一般的だ。

 だから、残された側は頑張って対応窓口を突き止めて、事態を説明したり必要な書類をそろえたりするしかない。

 NHKの場合は、解約手続きには全国共通の窓口として「NHKふれあいセンター(営業)」を設けているほか、払込用紙などに記載している各地域の放送局や営業センターでも対応している。いずれも電話対応が原則となっており、受付時間が限定されている上、つながりにくいという声もある。ただ、対応窓口としては比較的見つけやすいほうだ。

NHK受信料の解約についての規約NHK受信料の解約についての規約(NHK公式サイトより) 拡大画像表示

 苦労するのは、ヘルプページから解約の方法にすらたどり着けない場合だ。

 あるサブスクサービスは、奥まったところに置かれた解約メニューに2段階認証を設定しており、認証を経ても翻意を促すキャンペーンページをスクロールしないと手続きが進めない構造になっていた。ページ下段の「解約します」を押してもなお次のアンケートページで翻意できる作りになっていて、そこでもう一度「解約します」と意思表明することでようやく解放される。契約者本人でも相当面倒で、遺族の立場では到底達成できそうにない。

 こうした状況を踏まえてか、5月25日に可決・成立した改正消費者契約法では、定額制サービスを提供する事業者の努力義務として「解除権行使に必要な情報提供」が盛り込まれた。将来的には運営元に直接アプローチすればほぼ問題なく解約できるようになるかもしれない。業界全体での今後の改善を期待したい。

 ここまで読んで、個別に手続きするよりも、銀行やクレジットカードなどの自動引き落とし先を止めたほうが手っ取り早いと思った人もいるだろう。しかし、むしろそちらのほうが茨(いばら)の道かもしれない。そこが本記事で伝えたいところだ。