保険会社の社員も知らない?
人身傷害保険で損害額全額を補償
2022(令和4)年3月24日に、人身傷害保険に関する最高裁判所による判決が出た。交通事故の事件である。
意外と知られていないが、交通事故の被害者は人身傷害保険を使うことで自己に過失がある場合でも、その過失部分を含め補償を得る方法がある。今回の最高裁判決で、この方法に関して発生していた2年間の混乱がようやく収束した形となった。
まず、交通事故被害者が自己に過失がある場合に、過失部分を含め最大額の補償を得る方法から確認していきたい。
保険会社担当者も理解していない? 人身傷害保険を使った損害全額を補償する手段
交通事故に遭った被害者には、さまざまな損害が発生する。治療費、休業損害、慰謝料をはじめ、後遺障害が残れば後遺障害によって将来得られたはずの収入減収分である逸失利益、後遺障害の慰謝料などである。それら損害の全額が、交通事故被害者に補償されるのだろうか。
停車中に追突されたような事故や、センターラインをオーバーして衝突されたような事故など交通事故の被害者に過失がない場合には、加害者が加入する保険(対人賠償責任保険)から賠償を受けるのが基本である。しかし交通事故では、被害者にも過失が発生するケースが多い。
※加害者が任意自動車保険に加入していることを前提とする。
被害者に過失がある場合、加害者の対人賠償責任保険から被害者に対して支払われる賠償額は過失相殺(減額)され、被害者の過失部分については支払われない。これは、加害者が法律上賠償責任を負う範囲で支払われるという対人賠償責任保険の性格から、当然のことである。
では、被害者は自己の過失部分の補償は受けることができないのだろうか。そんな自己の過失部分の補償を受けるために使われる保険が、被害者自身が加入する人身傷害保険である。
この人身傷害保険を巡り、この2年ほど混乱が生じていたが、今年3月24日の最高裁判所の判決により、終止符が打たれた。次ページ以降では、裁判の争点および最高裁判決の具体的な中身を解説していこう。