「あおられ運転」なる新語の危うさ、あおり運転を正当化する人の本音写真はイメージです Photo:PIXTA

近年、大きく報道され、「妨害運転罪」の新設にもつながった「あおり運転」。一方で、ドライバーたちの間で「あおられ運転」という言葉が語られることがあるのをご存じだろうか。(フリーライター 武藤弘樹)

妨害運転罪新設とともに生まれた?
“あおられ運転”というワード

 2020年、あおり運転が厳罰化され、一発で免許取り消しの処分が下るようになった。

 東名高速で起きたあおり運転をきっかけとした悲惨な事故が社会問題化したこともあった。また、ドライブレコーダーの普及で、あおり運転に対する意識が高まったこともあり、法改正が行われ、あおり運転への注目は一層高まった。

 新設された妨害運転罪(通称“あおり運転罪”)の検挙数は1年で100件とのことで、数字だけ見ると意外に少ない気がするが、できたばかりの法律だから執行する方も手探りの部分はあるだろうし、初年度ならこんなものなのかもしれないという気もする。

 この妨害運転罪の新設に伴って、車間距離保持義務違反などの広義の“あおり運転”に含まれる行為もより厳しく取り締まられることになった。車間距離保持義務違反は妨害運転罪新設にともなって「前年同期比で約20%減」(2021年、国家公安委員会発表)とのことで、ドライバーの意識が啓発されつつある可能性を示した数値となっている。

 そうした流れの中、新たに“あおられ運転”という言葉が生まれた。

 これは「あおり運転を受けやすい運転」のことを指し、たとえば「追い越し車線を低速で走る」「無理な割り込みをする」などがこれに当たる。「あおり運転をされないために、“あおられ運転”の特徴を理解して、“あおられ運転”をしないようにしよう」という文脈で用いられることが多い。

“あおられ運転”という語に含まれた真の意図について考察し、また“あおられ屋”などが出てきている現象についても少し触れてみたい。