コロナ禍で有名店が相次ぎ閉店
老舗レストラン、菓子チェーンも

 ジャンボの経営を最も圧迫したのは、前述した通り、2020年から始まった新型コロナの感染拡大だった。香港は厳格なコロナ対策でアルファ株、デルタ株は比較的抑え込むことができたが、オミクロン株の感染を防御するのは難しく、2021年末からは第5波を迎えている。

 そうした影響を受けて、香港を代表する老舗レストランの「陸羽茶室」を始め、名だたる有名中国料理店が軒並み休業や閉店に追い込まれている。飲食店ではないが、中国人観光客向けといわれた菓子チェーン「優の良品」も閉店したばかりだ。

 このような厳しい環境の中、高額な維持・補修費を確保しなければならず、団体観光客がメインターゲットだった大型レストランのジャンボが生き残ることができなかったのは、時代の必然といえるのかもしれない。

 だが、タグボートにえい航されながら香港の海を去っていくその後ろ姿に香港の現状を重ね合わせ、一つの時代の終わりと寂しい気持ちを抱いた人は、香港のみならず、世界中にいたのではないだろうか。