――筆者のジェームズ・マッキントッシュはWSJ市場担当シニアコラムニスト
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2021年2月、ラリー・サマーズ元米財務長官が唱えた見解は正しく、筆者は間違っていた。サマーズ氏は、ジョー・バイデン米大統領の景気刺策について、巨額で相当なインフレ高進を招くと警鐘を鳴らしていた。筆者は米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレを回避するために必要なら迷わず利上げに踏み切ると考え、そこまで懸念していなかった。筆者のFRBへの信頼は見当違いで、昨年6月までその誤りに気付かなかった。FRBが行動したのは、それからさらに9カ月後のことだ。
金融市場はここにきてようやく、FRBのタカ派急旋回がリセッション(景気後退)を招くかどうかに注目し始めた。サマーズ氏は景気後退を引き起こすとみている。だが、長期的に重要な問題も存在する。インフレが抑制された後、2009年以降に続いた長期停滞の時代に再び戻るのか、それとも新たな局面が訪れるのか。ここでも筆者は、以前の状態に回帰する可能性が高いと考えるサマーズ氏と意見が対立する。筆者はインフレ圧力がくすぶり、実質金利が上昇する新たな経済に移行する可能性が高いと予想する。
この問いは、向こう数年の投資戦略を練る人にとってみれば、学術的なものでは決してない。新型コロナウイルス前に続いた悲惨な低成長と過剰貯蓄に戻れば、長年にわたって勝利の方程式だった取引に舞い戻る。つまり、FRBによる金融緩和の復活で恩恵を受けるものをすべてロング(買い持ち)にする戦略だ。具体的には、割高なテクノロジー株、債券、未公開資産を買い、景気循環に敏感な割安株を見切るということだ。