ビジネスでプロパガンダを流したことを反省すべき

 今回、ロシアとウクライナという遠く離れた異国同士の戦いではあるが、ロシアの延長戦上には中国の存在があるので、日本人のナショナリズムが強烈に刺激された。これがさらに事態を悪化させた。

 テレビや新聞は、恐怖や憎悪をあおった方が視聴率や部数が上がることがわかっている。つまり、ロシアと中国をセットにして、「北方領土が危ない」「台湾有事の恐れもあるぞ」なんて騒げば騒ぐほど、チャリンチャリンとカネの入るサイクルがマスコミの中にでき上がってしまったのである。

 かくして、日本ではこの4カ月、「ロシア=人類の敵」というかなり一方的なバイアスのかかった戦争プロパガンダ報道が流れていたというワケだ。

 このあたりの構造的、組織的な問題を、マスコミの皆さんがその卓越した取材力をもって検証してくれたら、「なんだよ、記者クラブとか軽減税率とか自分たちに都合の悪い話はいつもスルーなのに、今回はちゃんとしているじゃん」とアンチの人々からも再評価されるのではないか。

 もちろん、この検証企画は、そんなイメージアップ以外に「社会の公器」として意義もある。

 このような形で「戦争のどさくさに紛れて流される報道はインチキばかり」というリテラシーを、日本国民に身に付けさせることは、「国防」や「国民の命を守る」という観点からも非常に大切なことだからだ。

 もし台湾有事が勃発して、中国と日本を含めた周辺国の間に武力衝突が起きてしまった場合、日本国内ではさまざまな「戦争報道」がなされるだろう。それは当然、中国をおとしめるプロパガンダになるので、国民がそれをノーリテラシーで鵜呑みにしてしまったら、目もあてられないひどい事態が起きてしまうのだ。

 例えば、ロシアのプーチン大統領に関して散々報道されたように、「習近平氏は病気で正常な判断ができない」なんてフェイクニュースや、中国軍の戦力についてかなり偏った報道が連日のように流れたらどうか。真珠湾攻撃をした時、日本ではお祭り騒ぎだったというような、調子に乗りやすい国民性を考えると、「中国も大したことはないぞ、日本もアメリカと協力して徹底的に打ちのめせ」なんて好戦ムードが一気に高まるはずだ。

 これが戦争プロパガンダの最も恐ろしいところだ。