2022年の「保守」と1915年の
日本人の主張は瓜二つ

 事実、共通点は他にもある。

 自民党内で配布された冊子では、同性愛は後天的な病であって、家庭環境が原因だと主張しており、次のように具体的な「同性愛者のつくられ方」を示している。

「同性愛者の母は、子供と密接な関わりを持つ親密な母や子供に対して過度に統制的で抑圧的な母が多く、同性愛者の父は子供との距離感があったり、敵対的、或いは子供に対して否定的な父が多い」

「これはさすがに偏見では」とあきれる人も多いだろうが、実はこれも100年前の日本では「常識」として語られていた。先ほどの医学博士も、幼い時に父親を亡くした女児は、母親との結びつきが強くなって同性愛へ走る傾向があるとして、こんな解説もしている。

<異性の居ない處(ところ)に里子にやられるとか三、四歳から同性者と共に寄宿せしめるような場合に其人は同性の愛の傾向を有するに至ります。又両親が欠けるか不幸な教育を受けた人々はヒステリーや神経質に陥る事は事実で、また是等ヒステリーや神経質のものには同性の愛情を有つている者も多いのです>

 さて、そこで気になるのは、なぜ2022年の「保守」と1915年の日本人の主張がこうも瓜二つになるのかということだろう。

 今回の炎上騒動で、さまざまな専門家が指摘しているように、「同性愛は精神障害」というのは現在、科学的に否定されている。WHO(世界保健機関)や米国精神医学会、日本精神神経学会なども同性愛を「治療」の対象から除外しているのだ。

 にもかかわらず、自民党議員の中には、そんな「科学の進歩」から頑なに目を背ける人たちがいる。

 なぜ100年前の日本人が主張していた「同性愛は精神障害」という古い話を延々と引っ張り続けているのかというと、それが「保守政党」というものだからだ。