とはいえサイボウズと違い、多くの上場企業ではこの春の春闘で賃上げが決定されました。こちらは消費者物価指数が急激に上がり始めることが明白だったタイミングであり、岸田政権からの賃上げ要請が重なった時期でもありました。結果、大手企業の春闘妥結状況は平均で2.27%の賃上げとインフレを上回っています。

 一方で経団連が発表した調査によれば、従業員数500人未満の中小企業の春闘での賃上げ率は1.97%と年収が実質的には目減りする水準にとどまりました。現場の声を聞くと「上げたくても元手がないので上げようがない」とする中小企業経営者は少なくありません。

 原油高による電気代の上昇や、円安、小麦価格の高騰など、この夏から秋にかけてはさらに消費者物価が上がりそうな状況です。大企業の場合は、サイボウズに倣って秋の値上げに対して特別手当の給付に踏み切る余力があるかもしれません。おそらくそれができる余力のある大企業の従業員数は、日本全体の2割程度ではないでしょうか。

 では、賃金も上げられない、特別手当の余力もないという中小企業は、どうすればよいのでしょうか? ここで考えるべきは「ステルス値上げ」ならぬ「ステルス賃上げ」だと私は思います。

ステルス値上げには
「ステルス賃上げ」で対応すべきだ

 ツイッターユーザーがリュックに入れっぱなしになっていた10年前のキットカットを発見したところ、そのあまりのサイズの違いにびっくりしたというツイッター投稿がバズりました。「最近、サイズがずいぶん小さくなったな」と皆感じていたものですが、実際に画像が出現するとステルス値上げの度合いに驚きを感じます。

 値上げラッシュの中で価格を上げることに踏み切れない企業が、ステルス値上げを選択するケースが増えています。「食べやすいサイズにしました」など言い方は工夫していますが、価格は同じでも量が少ないというのがステルス値上げというものです。

 それと同じ発想で提案したいのが、「ステルス賃上げ」で、賃金は同じでも働く時間が短くなるという考え方です。8時間働かなければならない従業員が、同じ仕事を6時間で終えられるようになれば固定給なら実質的に賃上げになります。