セキュリティー強化で差別化を図るアップル

 プライバシーとセキュリティーは、これまでもアップルが他社との差別化を図る上で重視してきた分野だ。macOSやiOSは、過去にウィルスなどに狙われにくいとされてきたこともあり、ここ数年、アップルは相対的にプライバシー保護に比重を置いて対外的なアピールを行ってきたといえる。

 しかし、サイバー攻撃が高度化、巧妙化する中で、同社は、より強固なセキュリティー対策を用意し始めた。そして、その取り組みも製品選びのポイントにしてもらう動きを強めてきたと感じられる。

 確かに、実際にロックダウンモードが必要となるようなユーザーは、政府要人や諜報関係者、対テロ分野などでアクティブなジャーナリストなど、限られた人たちかもしれない。だが、そのような人たちに選ばれること自体が、アップル製品に対する消費者からの信頼感を高める役割を果たし、また、究極のセキュリティー環境の実現は、日常的なセキュリティー機能に関するイメージ戦略にも貢献する。

 今回の「ロックダウンモード」の発表は、あえてWWDC 22のタイミングとずらして行われたが、これは他のニュースリリースの中に埋もれないようにしたかったからではないか。すでに発表済みで、Webサービスやアプリなどへのログイン時に、パスワードではなくアップルデバイスの生体認証技術(Touch IDとFace ID)を利用する「パスキー」とともに、アップルの次期OS群は目に見えるセキュリティー機能を強化している。これを機に、公的機関を含め、機密保持に敏感な組織でのアップル製品採用の流れが拡大するかもしれない。