大波乱となった今年1月の大学入学共通テスト。「数学Ⅰ・A」など7科目で、センター試験時代を含めて過去最低点を記録し、志望校の変更が相次いだ。片や、私立大学受験の方も、国が今年6月、現受験生が受ける2023年入試から、私立大入学定員厳格化を緩和する方針を打ち出した。特集『大学2022 劇変の序列・入試・就職』(全24回)#1では、国公立大学、私立大ともに劇変必至の23年入試を占う。実は、ある数字が大学の難易度予想の判断材料になるのだ。(ダイヤモンド編集部 宮原啓彰)
共通テストで起きた「数学ショック」
“揺り戻し”は起きるのか?
実施2回目を迎えた大学入学共通テストが物議を醸した2022年(今年1月)の大学入試。
「22年入試の特徴は大きく3点に集約できる」と、大手予備校、河合塾の近藤治・教育研究開発本部主席研究員は言う。その一つ目は、少子化に伴う競争の緩和。「難関大学でも、同じ偏差値帯の合格率は年々上がっている」と近藤氏。二つ目は、ポストコロナを見据えて前年までの地元志向が弱まりつつあること。そして三つ目は、やはり共通テストの難化だ。
これらの特徴は、半年後に迫った23年入試でも続くのだろうか?まず確実視されているのが、競争の緩和だ。18歳人口が2万人減になる109.7万人と、110万人を割り込むためだ。
21年入試で前年比14%減と史上最大の減り幅を記録した、私立大学の志願者数(一般選抜)は、22年入試も「横ばいのままで、“谷”の状態が続いている。逆に、23年入試も大学・学部新設によって入学定員増が見込まれており、競争緩和がより進む可能性が高い」(近藤氏)。
コロナ禍については、各大学でポストコロナへの動きが強まっているものの今後の感染状況次第だ。一方で、大学受験関係者の間でまず間違いなく見直しがあると目されているのが、大学入試全体に影響を与える共通テストである。
今年1月の共通テストは、大学入試センター試験時代も含めて、7科目で過去最低の平均点となった。特に数学では、「数学Ⅰ・A」が38点ちょうど、「数学Ⅱ・B」も43.1点(いずれも100点満点)と前回試験から20点近く下降し、「数学ショック」なる言葉も生まれた。
結果、「共通テストが必須の国公立大学受験者は総じて初志貫徹で当初の志望大学に挑戦したが、上智大学など私立大の『共通テスト』方式で、受験者を大きく減らした大学が出た」(近藤氏)。
そして、7月、「数学Ⅰ」「数学Ⅰ・A」の難易度を「あまり適切ではない」とする外部評価の結果が公表され、実施3回目となる来年1月の共通テストでは「数学を中心に、出題傾向は変わらずとも、難易度や出題量が易化される可能性が高い」と、大学や予備校関係者は口をそろえる。
そして、共通テストとともに23年入試の新たな“変数”になるとみられているのが、6月に明らかになった私立大入学定員基準の緩和だ。
次ページから、国の方針転換の陰でささやかれる、裏技的な受験校の新たな選び方について解説しよう。実は、私立大のある数字を詳しく調べることで、23年入試の難易度を予想する判断材料になるのだ。