双方が建て替えれば、建て替えのメリットはコストより大きくなるので、双方の利益になる。しかし、片方だけが建て替えると、建て替えた人はコストがメリットより大きくなってしまいかねない。

 理屈としては、隣家に対して「建て替えるので3だけコストを負担してほしい」と申し入れるか、「建て替えのコストを3だけ負担するから建て替えてほしい」と申し入れるのが合理的なのだろうが、木密地域のように当事者が多数存在していると、調整は容易ではない。

災害時の被害を減らすために
行政は何をすべきか

 行政は、各分野の専門家がいろいろと考えて規制などを打ち出しているのであろうが、それが全体を見渡すと必ずしも望ましい結果を生んでいないケースもある。

 例えば、災害時に危険性が高い場所に住んでいる人が「建て替えると建築基準法の規定で面積を狭くする必要があるから、古くて危険な家でも建て替えられない」といった状況に陥っていることが考えられる。

 そうした場合には、一定以上の強度(や難燃性など)を確保するための建て替えに限って、従来と同じ大きさの家を建てることを認める、といった配慮があると良いのではなかろうか。

 また、ハザードマップ上で一定以上の危険度とされる土地に関しては、時には開発許可を出さない、といった対応が必要だ。豪雨による土砂崩れなどの被害が報道される際に、「危険な場所に住宅地が最近造成されたものだ」といったコメントが聞かれることがあるが、そうした開発は認めないという方針も、場合によっては必要だ。