安全のためのコストを支払うように
政府は国民に呼びかけを

 危険が財産上のものにとどまるのであれば、上記のように「安く買える分だけ得だから」といった考えによって危険地域に住む人が増えてしまうとしても、ある程度は仕方ない。

 しかし、生命の危険を伴うとなると話は別である。コストを倹約すると死ぬかもしれないと思えば、安全のためのコストを無理してでも支払おうとする人が増えるはずだ。

 そうした観点からすると、「危険な所に住んでいると、家が壊れる」というだけではなく、「危険な所に住んでいると、死ぬかもしれない」という意識を国民に持ってもらうことが、国民の生命や財産を守るために重要だ。

 故意に国民の不安をあおる必要はないが、国民の生命を守るために有益なのであれば、強めに警戒を呼びかけることが必要だ。

 新型コロナを避けるために、政府はさまざまな呼びかけをしてきた。その結果として、多くの国民がコストをいとわず払っているわけで、災害の危険の大きな場所に住まないためのコストについても、同様に政府がさまざまな呼びかけをすることで、国民に安全のためのコストを支払ってもらえるように誘導すれば良いのではなかろうか。

 本稿は、以上である。なお、本稿は筆者の個人的な見解である。また、わかりやすさを優先しているので、細部は必ずしも厳密ではない。