企業も考える“呼び方”
頭でっかちにご用心

 呼び方をどうするかについては、企業でも試行錯誤が重ねられている。「あだ名で呼び合う」「役職では決して呼ばず、全員が“さん付け”」といったケースがある。

 それに対する反応はさまざまなようで、たとえば“さん付け”に対する意見としては、「“さん付け”で呼びあったことで偉い人の威厳がなくなり会社が崩壊した」や「役職呼びがなくなったことで堅苦しさが取れ、風通しが良くなるのでは」などがある。
 
“さん付け”一つ取ってみても正反対の主張がある……というのが実情である。たかが呼び方だが、されど呼び方で、きちんと向き合おうと思うと、よほど奥が深い。
 
 そんな中でうかがい知れるのは、「あだ名を禁止したらこうなる」「“さん付け”を徹底したらこうなる」と、因果を数式のように正解が単一のものとして考えて結論を急ぐのは心もとない、ということだ。
 
 上述の“さん付け”でも、「“さん付け”によって会社が崩壊した」というが、もしかしたら会社が崩壊する要因は他にもあったかもしれない。一方、「“さん付け”で風通しがよくなるかも」といっても、そもそも“部長”呼びだろうが“さん付け”呼びだろうが、日頃からものすごい偉そうにしている部長をなんとかしないと解決しないかもしれない。

 あだ名も“さん付け”も、あくまで数多くある諸要因の一つである、ということは頭の隅に入れておいた方が、よさそうだ。
 
 ともあれ、あだ名だけでここまで記事を書けるのが現代の世相であり、すなわち世間の理解が深まっていく段階であることを示している。「あだ名禁止」の議論の向こう側には、あだ名へのより深まった認識が誕生するはずである。