月55万円収入があるが、支出も月50万円

 夫は定年後の割に高給取りです。60歳以降も、手取り収入は40万円台後半。そこに妻のパート代を加えた、約55万円がMさんご一家の収入です。そして、かかる生活費は約50万円。5万円の余剰が出る計算ですが、ボーナス収入がないため、車検や税金、固定資産税などの支払いに向け積み立てをし、なくなります。つまり、老後資金を増やせる見込みは、現状のままではないのです。

 夫が70歳になるまでご夫婦の年金受給を繰り下げれば、年金収入は月に31万円ほどまで増やせそうですが、支出が現状のままでは赤字続きで、あっという間に老後資金がなくなってしまいます。今できることは、日々の生活費を削減していくこと。しかしアドバイスをしても、スマホのキャリアを変えることはしたくないし、食費もどうやり繰りしていいか分からない。自分で頑張るのは苦手なので、手伝ってほしいとばかり話します。削減方法や、具体的にどう行動したらよいかは一緒に考えられますが、実行はご本人にしていただかないと、家計は変わりません。それを何回もお伝えしているのですが、Mさんは変わらず、夫もこの状況をどう考えているのか、何の反応もありません。

 今は裕福に暮らしているかもしれませんが、今のままでは10年後が心配です。「下流老人」「老後破綻」といった、少し昔に流行った言葉が頭に浮かびました。そうした事態を未然に防ぐには、今の行動が大切なのに……と思いますが、その大切なポイントをなかなか共有することができません。

 今、一番心配なご相談者かもしれません。手遅れになる前に、自分で動くことの大切さに気が付いてほしい。「私にはできない」と諦めがちな方なのですが、できることから少しずつ、一つずつ、片付けていくことが重要だと思います。

 これを読んでいる皆さんも、「今のままでは老後が…!」と気が付いた時こそ、自分が変われるチャンスです。年を取ると、こうしたチャンスはだんだん減ってきます。気付いたときには逃さずに、すぐに行動してほしいと思います。