Cがトイレにこもっていた本当の理由は?

 翌日A部長は、B課長と管理課メンバーにそれぞれ、Cの仕事ぶりや普段の様子などを確認した。トイレ時間が原因で十分な業務指導もできていない状態だったので、仕事内容は書類の整理や簡単な資料の作成程度しかなく、周囲から叱責やいじめを受けた形跡もないことが分かった。またランチタイムになると休憩室で毎日ご飯大盛りのコンビニ弁当とサンドイッチをパクつき、ペットボトルのアイスコーヒーをがぶ飲みしていたとの話で、どうも心身の不調もなさそうだ。

 その日の午後、A部長が個室トイレに入ろうとすると、中から大声が聞こえてきた。

「やったーっ!昨日よりメチャ上がってる。これで利益確定だ」

 それはまぎれもなくCの声だった。普段は黙ってスマホをいじっていたが、株で大もうけをした瞬間、つい喜びが声に出てしまい、偶然A部長に聞かれてしまったのだ。Cの雄たけびを聞いたA部長は、ドアをドンドンとたたきながら叫んだ。

「コラッ、C!今すぐに出てこい。仕事をさぼって何してるんだ!」

 トイレから出てきたCに事情を聞くと、トイレにこもり株の売買をしたり、データを閲覧したりしていることを素直に白状した。A部長はD社長にもその旨を報告、Cは社長室に呼ばれ、コッテリと絞られた。反省したCは、以後トイレにこもることはなくなった。

 しかもその後、仕事中にトイレに立とうとすると周りの視線を痛く感じるようになり、Cは会社でトイレに行けなくなってしまった。

「ランチはご飯大盛りの焼き肉弁当が食べたいし、アイスコーヒーもがぶ飲みしたいけど、トイレが近くなるから我慢しよう……」

 サンドイッチをつまみながら、そうぼやくCだった。

※本稿は実際の事例に基づいて構成していますが、プライバシー保護のため社名や個人名は全て仮名とし、一部に脚色を施しています。