物価構造の変化に置き去り
「縮小均衡」に転げ落ちる瀬戸際
賃上げに改めて焦点が当たっている。
岸田文雄首相は7月下旬、経団連の夏季フォーラムで賃上げの必要性を訴え、黒田東彦日本銀行総裁も7月の金融政策決定会合後の記者会見で、「もう一段の賃金上昇が実現していくということを期待している」と語った。
賃上げの必要性は長らく指摘されてきたが、ここにきて改めて強調されるのはなぜなのか。
このタイミングで、十分な賃上げで持続的な賃金引き上げの流れをつくることができなければ、日本経済はこの先、長期的に縮小均衡の坂道を転がり落ちるシナリオが現実味を帯びてきているからだ。
その背景には、米中対立や脱炭素化などここ数年で明らかになってきた世界経済の構図や物価の中長期トレンドの変化から日本が取り残されていることがある。