――なぜインドなのですか?

中根 車検制度が新設されたからです。近年、インド政府は経済振興策として電気自動車に力を入れています。その需要を伸ばすために、車検制度を新設して古い車を廃車にしようとしているのです。今年4月から一部の車でスタートし、2024年までにすべての車に適用される予定です。廃車が大量に出れば、膨大な自動車電線が発生しますから、ナゲットプラントのニーズが高まります。

 この可能性を予見し、私は10年前からインドを訪問していました。JICA(国際協力機構)の海外実証事業で自動車工業会に設備を設置するなど、インド側に継続的にアピールしてきました。それが実を結びつつあり、6月に仮契約ができました。ここ2年で10セット程度の設備をインド各地のリサイクル工場に納品するのが目標です。

――大きなビジネスになりそうですね。

中根 インドの事業のめどが立ったら、千葉市内に新工場をと考えています。現時点でも受注残が1年半分あるので、これ以上お客さまにご迷惑をかけないためにも必要なのです。

 融資は千葉信用金庫さんにお願いしたいと考えています。千葉信金さんには創業時からよくしていただき、経営が苦しいときも助けていただきました。今後もメインバンクとしてお付き合いさせていただきたいですね。

――他に力を入れていることは?

中根 知的障がい者の就労支援事業です。発端は、10年ほど前にあるお客さまから、「障がい者が使える剝線機を作ってほしい」と頼まれ、座ったまま作業ができる「卓上型剝線機」を開発・発売したことです。電線の皮むき作業は簡単で安全なので、障がい者の作業にピッタリです。

 そんな折、千葉市内のある施設とつながりができて、電線の皮むき作業を提供するようになり、以来、今年の3月には、千葉市を中心に13の施設に提供し喜んでもらっています。そのうわさが広まって、県内の工業高校や電気工事業組合からの協力の申し出があり、使用済み電線を無償提供してくださっています。

 さらに、「中根さんも就労継続支援B型事業所を立ち上げ、自らも障がい者の就労支援事業を」との声に背中を押され、就労支援事業への腹を決めました。

日本初の電線リサイクル装置を開発 インド進出や、知的障がい者事業も展開新たに立ち上げた知的障がい者就労支援施設の外観と作業風景
●三立機械工業株式会社 社事業内容/産業機械製造業、従業員数/22人、売上高/8億300万円(2022年3月期)、所在地/千葉県千葉市稲毛区山王町335-1、電話/043-304-7511、URL/sanritsu-machine.com

 現在は、建物が完成し、事業の許認可も取得したので、特別支援学校から研修生を受け入れているところです。順調にいけば来年には本格化を目指します。この事業を成功させて、リサイクルと障がい者雇用の両方の課題をクリアする「千葉モデル」をつくりたいと考えています。

――インドもありますし、大忙しですね。

中根 相手が抱える社会的課題を解決して、相手に喜んでいただければ幸いです。今77歳ですが、体力が続く限り、精いっぱい取り組みたいと考えています。

(取材・文/杉山直隆、「しんきん経営情報」2022年9月号掲載、協力/千葉信用金庫