小さく挑戦させて
保護し、育てる

 つまるところ、新しいことを生み出すための実戦経験がプロデューサー、ディレクター、職人ともに決定的に不足しているのである。このような能力はちょっと研修やらワークショップを実施したくらいではどうにもならない。この状況下にあっては、とにかく実戦の機会を多く作らなくてはならない。今まであまりやったことのない新しい取り組みの機会を増加させるのである。そのためには、三つのカテゴリーのなかでも、最初の起点となるプロデューサー候補の発見と抜擢が最重要課題となろう。

 ただ、最初から大きな事業創造など望んでも無理だ。毛色の違う新商品開発や異なる領域の改善プロジェクトのプロデュースからスタートし、その中から可能性のある人を発掘していくしかないだろう。もちろんそうした小さなプロデュースを経験させるにしても、プロデューサーにある程度権限を持たせる、そのプロジェクトに関しては内部統制をある程度緩めるなど、必要な条件を挙げだしたらきりがない。が、ともかく経営者候補のプールが必要であることと同様に、プロデューサー候補のプールを作っていかなければ、新しい取り組みを起こそうと思ってもできない状況が続く。

 もちろん、ディレクターや現場の職人の再興も必要なのだが、そこは後回しにせざるを得ない。現状の日本の大企業は、プロデューサー候補者を絶滅危惧種と認識し、その保護と繁殖に傾注しなければならないほど追い込まれている。

(プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役 秋山 進、構成/ライター 奥田由意)