EV普及策で景気下支えを狙う共産党政権
トヨタは半導体不足でレクサスの輸出が減少

 現在、中国におけるテスラの現地調達比率は95%に達したとみられる。共産党政権にとって、急速に上海での事業運営体制を強化するテスラは、雇用の下支えに欠かせない存在になっているだろう。

 テスラにとっても、共産党政権の政策運営は、成長の加速に追い風になる部分が多いはずだ。半導体などのIT先端分野や車載用のバッテリー、台湾問題などで米中の対立は先鋭化しているが、ことEV生産体制の一段の強化に関して、テスラと共産党政権の利害は一致している。

 現在の中国経済では、EVは需要が伸びている数少ない品目だ。年初来で見ると、全体として中国の新車販売台数はかなり不安定に推移している。ゼロコロナ政策の徹底によって3月末から5月末まで最大の経済都市である上海がロックダウンされ、自動車の生産と販売は急減した。4月の新車販売台数は前年同月比で47.6%減だった。

 その一方で同月、新エネルギー車は44.6%増加した。まさしく共産党政権の補助金政策などに支えられて販売が押し上げられている。加えて、日独の自動車メーカーが車載用の半導体不足に直面していることも大きい。

 わが国ではトヨタ自動車を筆頭に、自動車生産が停滞している。中国で人気を博してきたレクサスブランドの輸出は減少し、需要を取りこぼしている。その分BYDなどに需要が回ったのだ。ロックダウンによって一時停止したテスラの生産は4月中旬に再開し、5月の販売は急増した。雇用・所得環境の悪化懸念を背景に、低価格帯のEV人気も高まっているようだ。

 また、中国の国務院(内閣に相当)は、新エネルギー車の購入税免除措置を23年末まで延長すると決めた。ゼロコロナ政策によって落ち込んだ個人消費を支え、EV関連分野での雇用促進を勢いづけるために、その後も補助金などの政策は強化される可能性が高い。テスラは中国での事業運営体制をさらに強化するだろう。共産党政権としても、中国での調達体制を強化して雇用を創出する力を持つ外資企業は軽視できないはずだ。