中国の四川省で猛暑と干ばつから停電が起き、トヨタ自動車やパナソニック、デンソーなどの工場が停止する影響が出ている。収束がまだ見えないため総括するには時期尚早だが、あえて述べるとすれば、どんな教訓が考えられるだろうか。サプライチェーンの専門家が解説する。(未来調達研究所 経営コンサルタント 坂口孝則)
中国でゼロコロナ対策の次は
「熱波」が大問題に
「暑いのはたまりませんわ」――。例年、お盆明けに取引先と交わす会話ならば、残暑を嘆くよくある雑談だと思うだろう。しかし今年はそうではない。暑さが、サプライチェーンにとって耐え難い状況になりつつある。
現場はお隣の国、中国だ。中国は7月から8月下旬現在、記録的な猛暑に襲われ、400以上の都市で37℃を超え、240を超える都市で40℃を超えているという。また、降水量も例年を下回っている。さらに最悪なことに、こうした状況がしばらく続く可能性が高い。
特に中国の南西部の状況が厳しい。四川省では、電力の大半を水力発電に依存しているが、干ばつで水力発電が機能せず停電が相次いでいる。地下鉄など公共施設では節電のため照明を落とし、室温を上げている。また、大半の工場が電力供給を受けられず、少なくとも7日間は工場を停止せざるを得なかった。工場の稼働よりも家庭への送電を優先して、熱中症による死亡を防ぐためだ。政策としては間違っていない。
中国は農業大国でもあり畜産大国でもある。産業用の送電がなくなれば、化学品や肥料の生産ができない。これから田畑や牧場でも大ダメージを受けそうだ。
四川省には多くの重要企業が集まっている。代表的なのは、世界最大の電子機器の受託製造企業であるフォックスコン。米インテルやテキサス・インスツルメンツ、台湾企業のコンパル・エレクトロニクスもある。また、ソーラーパネルの一大製造拠点でもある。ここから世界の電機および自動車産業に多くの部材を供給している。
停電が収まっても、供給難はしばらく続くだろう。米中の経済戦争にコロナ禍、さらに熱波が到来して、中国の産業界は三重苦に直面している。彼らと取引する日本企業も大きな影響を受けることは言うまでもない。そうした中、日本企業が米テスラの対応から学ぶべき重要な教訓がある。