「飛ばし視聴」ニーズには
SNSの拡大が関係している

 倍速再生をする人の多くは「とりあえず倍速で観て、面白ければもう一度普通のスピードで観る」という人が少なからずいるようだ。でも、なぜそうまでして観る必要があるのだろうか。私ならドラマにせよ映画にせよ自宅で観ているのだから、見始めて面白くなければそこでやめてしまえばいいだけだ。わざわざ倍速にしてまで、最後まで観る必要はない。

 前述の本によれば、「仲間内で話題になっている映画やドラマの話題についていけなくなることのないよう、とりあえずストーリーの概要と結論だけは知っておきたい」ということのようだ。

 特にSNSの拡大が、その傾向に輪をかけていると著者は指摘する。確かにLINEのようなツールではいつでもつながっている状態なので、話題についていけなかったり、反応できずに、いわゆる“既読スルー”の状態になったりすることはしばしば起こり得る。それについて相手からどう思われるのかということを気にし過ぎているということなのだろう。

 そこにあるのは「友達に良く思われたい」とか「仲間はずれにされたくない」という気持ちなのかもしれない。だから話題になっている作品は、倍速でも飛ばし視聴でも何でもして、とりあえずおおまかな筋と結論だけは知っておくが、そうでないものは見ないということになってしまう。

 これが仕事であれば、飛ばし視聴は十分あり得る。筆者自身も自分の専門に関するセミナー動画を早送り視聴することはやっているし、仕事上、読んでおいた方がいいと判断した本はとりあえずYouTubeで本の要約をしてくれるチャンネルを視聴し、その後に改めて購入するということもしばしばやっている。