嗜好・娯楽において主体性を失うのは
人生の損につながりかねない

 でも映画やドラマを見ることは映画評論家ではない我々にとっては仕事ではなく、あくまでも楽しみなのだ。つまり自分の好み、自分が見たいものを見るわけであり、人に合わせて無理やり見る必要など全くない。

 倍速や飛ばし視聴をすることの問題点は、作った人を冒涜していることというよりは、「嗜好の世界ですら自分の主体性を失ってしまう」ということにあるのだ。

 でもこれは、若い人がどうこういう問題ではなく、中高年でも同じようなことをやっている。

 倍速視聴こそしないものの、「人に良く思われたい」とか「人に自慢したい」という気分からフェイスブックやインスタグラムにリア充ぶりを投稿するのはよく見受けるパターンだ。

 たまたま家族と旅行に行って本当に楽しかったことを投稿するのであればともかく、ただ人にアピールしたいために、インスタ映えする写真を撮りたいために、お金を使うというのはかなり無駄な行為のように思える。

 情報過多の時代だから倍速視聴という考え方は理解できないことはないが、自分がやりたい、あるいは自分が観たいかどうかを基準にするのではなく、人からの評価を基準にして時間やお金を使うというのはよく考えた方がいいのではないだろうか。

(経済コラムニスト 大江英樹)