ソフトウェア世界最大手の米マイクロソフトは今月1日、ネット検索第2位のヤフーに対し、総額446億ドル(4兆7500億円)にものぼる巨額な買収提案を行なった。現在ネット検索市場では、グーグルがシェア約6割を占め、圧倒的優位な立場を築いているが、もし今回の買収が実現すれば、そのグーグルに対抗できる規模となり、ネット検索市場でマイクロソフト(ヤフー)vsグーグルという2強時代に突入することになる。また、ネット検索だけでなく、ネット広告、ソフトウェア、携帯電話事業などIT業界全体に大きな影響が出る可能性も高い。
そもそもマイクロソフトは今回の買収提案にいたるまで、水面下で約1年半にわたりヤフーに対し、経営統合の打診をしてきたという。しかし2007年初めにヤフー側から正式に拒否されていた。しかしそれから1年、マイクロソフトは巨額な資金を用意し、ついに買収提案に踏み切った。マイクロソフトはなぜ、経営統合ではなく「買収」に切り替えたのか?
マイクロソフト、
成熟企業としての焦り?
マイクロソフトに買収を決断させた大きな理由としては、自社だけで成長することに限界が来ているということだ。つまり、成熟企業になりつつあるということではないだろうか。これまでは、豊富なキャッシュ→開発→企業価値を高めるという形で充分に成長することができた。しかし、今回これだけの買収に打って出たということは、自社の成長力にかげりが見えてきたということの表れである。自力の成長路線から、買収による成長路線へ舵を切ったわけである。
今回の買収提案の大きな特徴としては、
1) 買収規模が非常に大きいこと
2) ヤフー株に対する買収プレミアムが62%と非常に大きいこと
がある。
1)については、総額446億ドル、日本円にして5兆円近くにものぼる巨額であることからも、異例の規模であることがわかる。2)については、ヤフー株価1株あたり19ドルに対し、31ドルで買い取るというものであり、かなり大胆なプレミアムを付けたといえる。446億ドルの買収金額のうち、プレミアム相当分は171億ドルにものぼり、それだけのプレミアムを付けるだけのメリットがこの買収にあるということをマイクロソフト側は説明しなければならないのだ。
そこでマイクロソフトのホームページを見てみると、今回の買収提案に対する説明が書かれている。まず非常に強調しているのが、「シナジー効果が上がる」ということ。買収によるスケールメリットが大きいことやコスト削減、革新的な技術の融合により、ビデオや携帯電話事業などの技術革新が可能になるなど様々なメリットがあるという。そのシナジー効果は「年間10億ドル以上」であり、171億ドルの買収プレミアムも充分に回収できるとして、マイクロソフトの株主にとっても非常にメリットがあると説明している。買収側の企業自身が公式にここまで説明していることは珍しく、日本ではあまり見られないことであるため非常に興味深い。