武田薬品の年収格差は60倍!
それでも小さい日本経営者の市場価値

 下図は主要企業46社の「スキルマトリックス」から、経営者のスキルとして重要視している項目を抽出したものだ。スキルマトリックスとは、取締役がどの分野について知見や専門性を持っているかを、一覧表の形でまとめたもの。複数の取締役でスキルを補完し合うことで、ベストな経営チームを目指そうというものだ。

図表:企業が重視している経営者のスキル
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 それによると、「企業経営」「法務・リスク」「財務・会計」「グローバル」の4項目がスキルマトリックスの採用率90%前後に達していることが分かる。誤解を恐れずにいえば、これら4項目は経営者のスキルとしては一般的なものばかりで、経営者が備えるべき前提条件のような能力だろう。

 現在は平時ではなく、将来を見通しにくい有事だ。従来、日本企業ではサラリーマン社長が就任期間を“大過”なく過ごせればそれなりに評価されてきた点は否めない。だが、前例通りに堅実に仕事をこなす優等生タイプの経営者では、この難局を乗り越えられない。

 これでは、後継者を育成する以前に、異端経営者すら生まれない。「デジタル」「イノベーション」「自社固有の特殊スキル」などの項目に代表されるように、テクノロジーの変化に敏感で独自の勝ちパターンを描ける経営者こそ、現代における理想の経営者なのではないだろうか。

 また、日本企業の経営者の前例主義、業界の横並び主義は、「報酬面」にも如実に表れている。

図表:主要40社の「一般社員と役員の年収格差」
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 上表は、主要40社の「一般社員と役員の年収格差」をランキングにしたものだ。

 3位ソニーグループや4位伊藤忠商事の年収格差はそれぞれ35.2倍、32.7倍だが、役員の年収だけではなく一般社員の平均給与も高いのも特徴だ。

 クリストフ・ウェバー社長CEOが率いる武田薬品工業の役員報酬は別格で高く、平均6.7億円。年収格差は60倍を超えている。だがそれでも、年収格差が300倍を超えることがざらの米国企業に比べれば小さい。

 日本では、経営者個人のスキルに対してではなく、役員ポストに対して報酬が支払われている感覚が残っているからだろう。日本の経営者の市場価値が上昇するには、まだまだ時間がかかりそうだ。