ひとり終活大全#4Photo by Masato Kato

漫画「島耕作」シリーズで知られる漫画家の弘兼憲史氏は、もうすぐ後期高齢者の仲間入りをするのに、1日に10時間以上を漫画制作に充てるという。特集『ひとり終活大全』(全24回)の#4は、「最期まで漫画を描き続けたい」という弘兼氏が、現在の生活や死生観について語る。(聞き手/ダイヤモンド編集部)

「週刊ダイヤモンド」2022年7月16日・23日合併号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

75歳でも漫画だけでいっぱいいっぱいの人生
突然やめると周りに迷惑を掛けるから

 今年で75歳になりますが、漫画だけでいっぱいいっぱいの人生を送っています。朝9時くらいに起きて、ファミレスや喫茶店でアイデアを練り、午後1時くらいから仕事場に入って朝の4時くらいまで漫画を描くという日々。現在連載しているのは、中高年のラブストーリーを描いた「黄昏流星群」と、「島耕作」シリーズで月に76ページ。

 運動はゴルフくらいしかしていません。週に1回はやりたいのですが、月に2、3回がせいぜい。とにかく、時間がない。連載以外に、エッセーやイラスト、講演やらいろいろある。強引にやめることはできますが、まだ必要とされているし、突然やめると周りに迷惑を掛けますから。

弘兼憲史・漫画家ひろかね・けんし/1947年山口県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、70年に松下電器産業(現パナソニック ホールディングス)入社。73年に退社。『人間交差点』『島耕作シリーズ』など数々のヒット作を生み出す。妻は漫画家の柴門ふみ。 Photo by M.K.

 私の年ではもう仕事を辞めている人も多いでしょう。やることがなくて時間が余り過ぎるという方には、ボランティアをお勧めします。

 生活に余裕がなければ、交通費や弁当代くらいは出る「有償ボランティア」もあります。

 ボランティアがいいのは、他人に喜んでもらって生きがいを感じるだけではありません。自然と外に出て体を動かすので、運動不足解消や認知症防止にもなります。

 ボランティアをするには、それまでの肩書は捨て、年齢も関係なく皆平等という気持ちが必要です。

 それに抵抗がある高齢者も多いようです。名門ゴルフクラブなどでは高齢の会員が、プレーをせずに、朝からお茶を飲んだりして時間を過ごしています。金銭的に余裕がある高齢者なら、それはそれでいいと思います。人それぞれですから。

 次ページでは、「ペンを握ったまま死ねたら本望」という弘兼氏に、現在の生活や死に際にやってみたいこと、死生観を語ってもらった。