中堅ペット保険会社のペッツベスト少額短期保険が9月1日、実質的に破綻した。ペット保険各社に衝撃を与えたが、これはまだ序章にすぎないともいわれる。ペット保険市場には淘汰の波が押し寄せているのだ。特集『動乱の少額短期保険 115社ランキング』の#7では、ペット保険市場の厳しい先行きについて、レポートする。(ダイヤモンド編集部 片田江康男)
2度の業務停止処分受け
ペッツベスト少短が破綻
中堅ペット保険会社のペッツベスト少額短期保険に対して、関東財務局は9月1日、「保険管理人による業務及び財産の管理を命ずる処分」を発表した。実質的な経営破綻で、2006年に少額短期保険(少短)市場が誕生して以来、初めてのことだ。
これまで少短業者に行政処分が出されたのは合計8回で、そのうち4回がペット保険を販売する業者。ペッツベスト少短は22年6月10日と8月10日に業務停止命令と業務改善命令を受けており、通算3回目となる今回で、市場からの“退場処分”を言い渡された格好だ。
ペッツベスト少短では遅くとも21年12月には、契約者に対する保険金の支払い遅延が発生していた。保険会社としての最も基本的な使命である保険金の支払いを約束通りにできなかったこの時点で、既に保険会社の体を成していなかったと言わざるを得ない。
関東財務局は6月の行政処分で、支払い請求に応える体制を整え、外部からの資金調達を進めるように指導。ところがその後も一向に改善せず、業務停止命令が明ける8月10日に再び同様の行政処分が出された。
関係者によれば、同社は関東財務局の指導を受けるたびに、保険金の支払いを進めていることと、資金調達を実施する旨を答えていたという。
ところが9月1日に公表された行政処分では、同社は7月の時点で保険金の支払い遅延は4000件超、額にして約2億円に達し、その一方で現預金残高が約1600万円しかなかった実態が明らかにされた。
一刻も早く、ペッツベスト少短を救うスポンサーが現れることを願うばかりだが、同業の損害保険会社と少短の幹部は「買収のメリットはなく、誰も手を出さないだろう」と口をそろえる。
果たして、残されたペッツベストの契約者はどうなるのか。次ページではペッツベスト少短の先行きとともに、業界内でささやかれているペット保険業界の淘汰の波について、解説していこう。