動乱の少額短期保険 115社ランキング2022#8Photo:PIXTA

少額短期保険の「家財保険」の分野は、少短市場誕生時に参入した老舗業者がシェアを押さえており、ここ数年、序列変動がほとんど見られない。だが、SOMPOグループの少短、Mysuranceと家賃保証会社の全保連が、市場の“ゲームチェンジ”を起こす画期的な仕組みを導入している。特集『動乱の少額短期保険 115社ランキング』の#8では、既存業者が痛い目に遭うかもしれない、その仕組みを紹介しよう。(ダイヤモンド編集部 片田江康男)

無風状態の少短「家財保険」分野
競争を一変させる“ゲームチェンジ”とは

「家財」「ペット」「生保・医療」「費用・その他」の四つの分野に分けられる少額短期保険市場。その中で家財保険は、賃貸住宅の入居者向けの保険で、火災や水災、落雷などで家具や家電が破損した場合に保険金が支払われる商品だ。火災や水漏れなどで部屋が使えなくなってしまった場合、部屋の所有者(大家)に対して賠償する借家人賠償責任補償が付いているものが多い。

 2021年度末時点で、家財保険を主な商品として販売している少短業者は52を数え、収入保険料は計828億円。少短市場全体の65%を占める。

 少短市場は競争が激しいといわれるが、ペットや生保・医療分野と比べると新規参入企業が少なく、序列の変動がほとんど見られない。収入保険料ランキングの上位は、全管協グループと東京海上グループという、少短市場誕生前から家財保険を手掛ける業者の指定席となっている。

 両グループを筆頭にした収入保険料ランキングに変動がない大きな理由は、保険契約に至る過程を知れば納得できる。

 家財保険は不動産管理会社が加入を義務付けており、入居する人は賃貸借契約を結ぶ際に保険に加入する。ほとんどの人は、不動産管理会社に提示された少短の説明を受け、そのまま契約書類に記入している。

 そんな契約習慣があるため、ペット保険や医療保険などのように、保険料や補償(保障)内容を吟味することもない。

 少短業者からすれば、採算に合う一定数の契約を継続的に得るために、懇意にしている不動産管理会社との関係を維持することが最重要となる。そのめどが付けば、同業他社が押さえる不動産管理会社に、わざわざコストと人を投入して営業をかける必要もない。

 ところが、である。そんな無風状態の市場に、“ゲームチェンジ”の旋風を起こすシステムが、損害保険ジャパン傘下の少短、Mysurance(マイシュアランス)と、大手家賃債務保証会社の全保連からリリースされている。

 次ページで、そのシステムの全容と、潜在力について解説していく。