ペッツベスト少額短期保険やjustInCaseなど、少額短期保険業者に対する相次ぐ行政処分をどう受け止めているのか。また同時に規制緩和を求める真意とは何か。特集『動乱の少額短期保険 115社ランキング』の最終回では、業界団体である日本少額短期保険協会の渡邊圭介会長へのインタビューをお届けする。(聞き手/ダイヤモンド編集部 片田江康男)
大手参入は少短業界に「ポジティブ」
一方で情報開示姿勢に課題は?
――少額短期保険市場にはこの1年、第一スマート少額短期保険やニッセイプラス少額短期保険など、大手生命保険会社が子会社を設立して参入しました。どのような影響がありましたか。
これまで少短市場を引っ張ってきたのは、生保や損害保険の業界外のベンチャー企業でした。そうした企業は、生損保業界の常識にとらわれず、消費者目線のユニークな発想の商品を発売してきました。
そんな良さがある一方で、保険業という社会公共性の高い事業を行っているという認識の弱い企業も散見されました。
大手生保傘下の企業が参入したことにより、高いレベルのガバナンスやコンプライアンスを、既存の少短会社は間近で見ることができます。そうした点で、少短市場にとってポジティブな影響があったと考えています。
また、これまで私たちは規制緩和を求めてきましたが、実現すると生損保市場との境界線がなくなるので、生損保各社とは利害が一致しませんでした。ですがこれからは生損保各社と同じ目線で、少短の規制緩和について議論できると考えています。
実際の事業は、新型コロナウイルス感染症のまん延がありましたので、各社は今後どのように事業を行っていくか、模索されている状況なのだろうと感じています。
少額短期保険は文字通り、保険金額が「少額」で、保険期間が1~2年の「短期」の保険商品だ。保険料が安いため、誰もが契約しやすい、手軽な商品が多い。
その少短市場はここ数年、大手生保や損保会社の新規参入が相次いだ。新規参入組の狙いは、保険金が数千万円に及ぶ重厚な生命保険商品など、既存の主力商品では獲得できない顧客層にリーチすることだ。
市場は急拡大し、活性化。生損保市場と比較して知名度が低く、“マイナー”な存在だった少短が、一躍注目市場となっている。
一方で、不祥事も頻発している。ペッツベスト少額短期保険やjustInCase、ユアサイド少額短期保険などに対し、2022年4月以降、立て続けに行政処分が出された。
業界団体である日本少額短期保険協会は、そんな足元の状況がありながら、より大きな成長へ向けて規制緩和を求め続けている。そこで渡邊圭介会長に、行政処分が続く現状への認識と対策、規制緩和を求める真意について話を聞いた。