動乱の少額短期保険 115社ランキング2022#9写真:當舎慎悟/アフロ

2021年以降、大手生・損保傘下の少短が新規参入したが、少短各社が注目するような成功事例はなかなか出てこなかった。ところが22年夏、住友生命子会社のアイアル少短がPayPayと組んだ商品がまれに見るヒット。特集『動乱の少額短期保険 115社ランキング』の#9では、少短と生・損保各社から、新たな“鉱脈”になり得ると注目されている、成功事例を分析する。(ダイヤモンド編集部 片田江康男)

大手が新規参入も軒並み苦戦?
ようやく出た成功事例に注目集まる

 2021年から22年にかけて、少額短期保険市場には大手生命保険会社が子会社を設立し、競うようにして新規参入を果たした。22年度中には、損害保険最大手の東京海上日動火災保険が、グループ内で3社目となる少短子会社を新設し、参入する予定だ。

 少短の最大の特徴は、保険金額が「少額」で保険期間が「短期」であることと、商品審査が事前届け出制であること。通常の生保や損保の保険商品と違って、保険のニーズに対して機動的に商品を発売できる。

 新規参入した大手生・損保各社は、これらの特徴を利用して手軽な保険商品を市場に投入し、これまでリーチできなかった若年層の契約を獲得したり、彼らのニーズを把握したりすることを目的としていた。

 大手生・損保を迎え撃つ少短業者の間では、競争激化を覚悟しつつも、大手の参入で少短に対する注目度が上昇するのではないかという、不安と期待の入り交じった空気が流れていた。

 ところが、である。参入した大手傘下の少短の動きは意外なほどおとなしかった。

 生保業界最大手の日本生命保険は21年3月に参入を宣言し、1年の準備期間を経て、22年4月にニッセイプラス少額短期保険が営業を開始した。人・モノ・金において保険業界内で他を寄せ付けない生保王者であり、少短参入でその力を存分に見せつけるものと誰もが思っていたが、動静はほとんど聞かれない。

 今や少短関係者の間では、「大手傘下の少短は矢継ぎ早に商品を販売するでもなく、市場を席巻するような販売攻勢も見られない。結局、何をしたかったのか」と訝る声も聞かれるほどだ。

 そんな中、住友生命保険の子会社であるアイアル少額短期保険がこの夏に得た成功体験に、少短各社の注目が集まっている。早速次ページで、その手法を解説していこう。