動乱の少額短期保険#6Photo by Yasuo katatae

新型コロナウイルス感染者の爆発的な増加を受けて、2022年4月に保険スタートアップのジャストインケースが行った入院一時金支払額の減額。既契約者に対しても遡及して適用したため、保険業界内外に大きな衝撃を与えた。特集『動乱の少額短期保険 115社ランキング』の#6では、粛々と準備を整えてきたジャストインケースの次の一手と、衝撃の余波についてレポートする。(ダイヤモンド編集部 片田江康男)

コロナ第6波で既存契約も保障減額
ジャストインケースが与えた衝撃

 2022年、少額短期保険業界最大の“事件”を挙げるならば、保険スタートアップのjustInCase(ジャストインケース)が行った保険金支払額の減額となるだろう。

 ジャストインケースは20年5月、「コロナ助け合い保険」を発売。保険料は1000円以下で、新型コロナウイルスの陽性が判明し、医療機関に1泊2日以上の入院、あるいは自宅やホテル等で1泊2日以上の療養を行った「みなし入院」でも、入院一時金10万円が支払われる保険だ。保険料が手頃で、かつウェブサイトから簡単に申し込めるため人気があった。

 状況が変わったのは、22年1月から始まった新型コロナ第6波による爆発的な感染拡大だった。3月に入って入院一時金支払い請求が激増し、同月は保険料収入2990万円に対して、入院一時金支払額はその約6倍の1億7720万円。保険料収入を大幅に超過し、やむを得ず3月31日の販売停止を決めた。

 さらにジャストインケースは、保険会社の負う保険金支払いリスクを軽減させる再保険契約を更新できず、契約は3月末で終了。これが引き金となり、既契約者も含めて適用される保障内容の変更に踏み切った。

 その変更とは、4月7日以降に実際に医療機関に入院した場合は、入院一時金の10分の1をジャストインケースから、10分の9をグループ会社のjustInCaseTechnologies(テクノロジーズ)から「お見舞金」として支払う。一方で医療機関に入院せず自宅などで療養した「みなし入院」の場合は「お見舞金」は支払われず、一時金は10分の1に減額されるというものだった。

 契約者にとっては、契約時に約束された保障内容を、“後出しじゃんけん”で変更されたのと同義だ。約款には、保障内容が契約途中で変更される可能性が明記されてはいるものの、多くの生命保険や少短の業者幹部からは「禁じ手だ」と眉をひそめる声が相次いだ。

 契約者の中には、「コロナ助け合い保険」に免責期間が設定されていない点に目を付ける人もおり、契約直後に入院一時金を請求するケースが続出していた。新型コロナの感染状況を予測するのは困難で、禁じ手を繰り出す事態になったことに同情する声もあるが、迅速に販売を停止できなかった社内体制や商品設計など、詰めの甘さが背景にあったことは否めない。

 畑加寿也社長は4月、「今後に向けて、資本増強も検討しなくてはならないだろう」と言及。果たして、同社は「次の一手」をどう考えているのか。次ページでは一連の“事件”が少短業界に与えた余波も含めて、明らかにしていく。