その頃、自分自身にはその理由が分かりませんでした。「性格だからしかたがない」とか、「そう言われてもできないものはできない」などと感じていました。

 今なら、明快に答えが分かります。

 それは、「メソッドを知らなかった」からです。

 または、本当は効果のないやり方を正しいと信じて、「間違った方向に努力をしていた」からです。

 効果的なメソッドを知らずに、間違った方向に努力してしまうと、結果が伴わず、苦手意識がますます強くなってしまいます。

 たとえば、つっかえないようにと、話す内容を暗記することばかりに気を取られ、どこか1つでもつまずくと頭が真っ白になってしまう……。すでにこの時点で大きな間違いを犯しています。

 この本で紹介するメソッドさえ把握すれば、誰でも今よりずっと人前でうまく話すことが可能になります。それを皆さんにお伝えできればと書くことにしました。

僕は、どんなふうに、話しべたから
話し上手に変わったのか

 僕はスピーチの先生では、ありません。ましてや元アナウンサーでもありません。

 若い頃の僕は、口べたで寡黙、緊張しぃであがりがち。営業職など話し上手を求められる職に就くことが、イヤでイヤでたまりませんでした。だからこそ、かなりの努力を注ぎ込んで、書けば話さなくても何とかなるコピーライターを目指し、どうにか広告代理店に就職しました。