高齢者の心と体をむしばむ「自粛」
長寿大国に危険信号

 現在、政府が推進している国民健康づくり運動「健康日本21」(第二次)を検討する委員も務めている、千葉大学予防医学センターの近藤克則教授はこう述べる。

「コロナ禍での自粛で、多くの高齢者が友人・知人と会ったり趣味などへの社会参加の頻度を減らしました。しかし、そのような高齢者は社会参加を減らさなかった高齢者に比べて、“うつ”や“要支援・要介護”リスクが高くなっていることが調査で明らかになりました」

 近藤教授らが、11自治体の65歳以上の高齢者1万7179人を対象におこなった調査によれば、コロナ禍で「外出」を減らした高齢者は、減らさなかった高齢者に比べて、要支援・要介護リスクが1.95倍だった。「学習・教養サークル」を減らした高齢者に関しては1.68倍。さらに見ていくと、「通いの場」(1.57倍)、「スポーツの会」(1.46倍)、「友人・知人と対面」(1.45倍)となっている。「厳格すぎるステイホーム」は、高齢者の健康に悪影響を及ぼしていることがうかがえる。

 また、自粛は「心」にも良くない。同じくコロナ禍で「自宅内の趣味」を減らした高齢者は、減らさなかった高齢者に比べて、「うつ」のリスクが1.49倍、「スポーツ」や「趣味」の会への参加を減らした高齢者はそれぞれ1.37倍、1.34倍となるなど、要支援・要介護のリスクと同じような傾向が読み取れる。

 では、なぜ「自粛」はここまで顕著に、高齢者の心と体をむしばんでしまうのか。運動量が落ちることや、免疫機能が落ちるという説明が一般的だが、実はもうひとつ忘れていけない大きな要因がある、と近藤教授は言う。

「それは社会です。人と人とのつながりや、社会全体のまとまりの良さなどが高齢者の健康長寿に大きな影響を与えていることがわかっています」(近藤教授)