人との接触が健康を高めてきたのに
「自粛」は健康を阻害する

 未知のウィルスがまん延したことで、多くの高齢者は命を守るために自宅に引きこもらざるをえなくなった。本来は、国民皆保険で誰もが気軽に医療を受けられるが、病院に行くと感染リスクもあるということで、それも控えざるをえなくなった。

 また、日本は治安がいいので、高齢者でも安心して出かけて好きな人と会うことができたが、コロナ禍でそれもできなくなった。どこで感染してしまうかという不安を抱えながら、スーパーに行くだけでもマスクをしてウィルスにおびえながら出かけないといけなくなった。これはかなりのストレスだ。

 つまり、「コロナ健康二次被害」は、日本人を長生きにさせてきた「治安のいい日本社会」の良いところが、コロナ禍によってかなり制限されてしまったことで引き起こされている側面もあるのだ。

 これを踏まえると、次のパンデミックで「自粛」をする際に我々が注意しなくてはいけないことが見えてくる。

「また自粛を余儀なくされるような事態になっても“人と人のつながり”を完全に絶たないことが重要です。実際に、一人でやってもできることを、誰かと一緒にグループでやった場合と一人でする場合でどういう差があるのかを比較をしたところ、グループでやった時の方が、健康保護効果があるという研究が相次いで出ています」(近藤教授)

 東北大学大学院歯学研究科の竹内研時氏らが、高齢者1万2571人を約6年間追跡したところ、「一人でいるときのみ笑う」という人に比べて「友人と笑う」という人は要介護認定リスクが約30%低いことがわかっている。

「笑うだけではなく、誰かと一緒に運動や食事をしている方が“うつ”や死亡率が低いという分析結果もあります。食事の場合、一人で食べる人は食事を抜いてしまったり、野菜や果物の摂取頻度が低くなったりすることがわかっています。

 あと、男性の場合は“役割”をもって社会と関わると健康に良いことがわかっています。自分の健康のためにウォーキングをしようと思わない男性も用事があるとたくさん歩く。町内会の行事や祭りなどの役員になると、たくさん歩きますよね」(近藤教授)