決算報Photo:PIXTA

コロナ禍だけでなく、円安や資材高の影響も相まって、多くの業界や企業のビジネスは混乱状態にある。その状況下でも、苦境を打破できた企業とそうでない企業との間で勝敗が分かれている。そこで、上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回は東京電力ホールディングス、東京ガスなどの「電力/ガス」業界5社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)

東電・関電・中電が3~5割の大幅増収も
主要因は価格転嫁による「値上げ」

 企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下の電力/ガス業界5社。対象期間は22年2~6月の四半期(5社いずれも22年4~6月期)としている。

 各社の増収率は以下の通りだった。

・東京電力ホールディングス
 増収率:50.7%(四半期の売上高1兆4765億円)
・関西電力
 増収率:34.9%(四半期の売上高7676億円)
・中部電力
 増収率:45.9%(四半期の売上高7660億円)
・東京ガス
 増収率:52.0%(四半期の売上高6099億円)
・大阪ガス
 増収率:49.0%(四半期の売上高4671億円)

※東京ガスと大阪ガスは23年3月期第1四半期から収益認識に関する会計方針の変更を行っており、この変更を前年同期に遡及適用している。

 電力/ガス業界の5社は、いずれも2桁増収となった。関西電力は3割超、その他4社は5割前後と圧倒的な増収率を叩き出している。

 だが5社は、この大幅増収を手放しでは喜べない状況だ。

 というのも、電力/ガス業界では現在、ロシアによるウクライナ侵攻などの影響で燃料・原料価格が高騰し、調達コストが急上昇している。

 その影響を吸収するべく、各社は燃料・原料価格の上昇分を電気・ガス料金に転嫁している。5社が大幅増収となった要因は、この「値上げ」によるところが大きい。

 ただし各社が使用している、燃料・原料費の変動分を料金に自動転嫁する制度(※)には、需要家保護の観点から上限額が定められている。

※電力業界の燃料費調整制度、ガス業界の原料費調整制度

 この制度では、燃料・原料費が一定の水準に達すると、各社はそれ以上、料金への上乗せができなくなる。差額は自社で負担する必要性が生じるのだ。

 増収率だけに着目すると絶好調に見える各社だが、実はそうした背景から利益面では苦境に立たされている。その「深刻な実態」は一体どのようなものか。

 次ページで、各社の増収率の時系列推移を紹介するとともに、主に電力業界の現状について詳しく解説する。