ウラジーミル・プーチン露大統領は一方的にウクライナ領4州の編入を宣言した式典で、西側諸国のエリート層が信仰や家族、ロシア国家を損ない、「純然たる悪魔崇拝」を推進していると言い放ち、痛烈な西側批判を展開した。だが、実のところ、プーチン氏にとって最も重要な聴衆は身近なところに存在する。ウクライナ侵攻で危うさを増すプーチン氏に対して、不安を隠しきれなくなっているロシア国民だ。ロシアでは、世論の動向は西側ほど重要ではないが、それでも政府はプーチン氏の支持率に目を光らせている。足元では30万人の動員令という国民に不人気な措置に踏み切っており、さらに関心を強めている。プーチン氏は22年に及ぶ長期政権で、自身の立場が脅かされていると感じる度に、西側をやり玉に挙げてきた。9月30日に赤の広場で行われた祝賀式典での演説で、米国や同盟国の「邪悪さ」について大半の時間を割いたのも、こうした事情が背後にありそうだ。