MC20チェロは
いま、ブランドのベストバイ

 事実、チェロの重量増はクーペ比でわずか65kgにすぎない。開閉するリアカウル“スピードシェイプ”以外のデザインはクーペとほぼ共通。カウルが閉まった状態ではクーペと同じルーフ形状を維持する。それゆえ空力性能もクーペとほとんど変わらず、前後のダウンフォースバランスに至ってはクーペとまったく同じという。

 チェロの特徴は、セグメント最大面積を持つ電動リトラクタブルルーフ。特殊な液体を挟み込んだガラスルーフで、スイッチひとつで瞬時に透明から不透明へと変わる。また開閉に要する時間はわずかに12秒だ。

 クーペと同じバタフライドアを跳ね上げ、コクピットに潜り込む。カーボンシャシーを持つ高性能スポーツとは思えない上質な空間が広がっている。マセラティは確かにレースオリエンテッドな老舗ブランドではあるが、同時に豪華なグランドツアラーを作り続けてきた。MC20シリーズは、その両方をハイレベルで達成した初の市販モデルかもしれない。

 その走りは高速道路では安定志向を貫き、ワインディングではドライバーの意のままになるというキャラクター。スポーツカー好きには好ましい二面性が存分に味わえる。630psを誇るネットゥーノエンジンはつねに頼もしく、車体を前進させる。そのうえ爽快なオープンエアモータリングが可能。MC20チェロはいま、ブランドのベストバイだろう。

(CAR and DRIVER編集部 報告/西川 淳 写真/Maserati)

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