選別開始!倒産危険度ランキング2022#11Photo:mfto/gettyimages

海運業界はコロナ禍に伴う世界的な海運需要の高まりやコンテナ不足の影響で、未曽有の好況を迎えていたはずだった。そして、陸運業界も在宅勤務や外出規制によるネットショッピングの増加で追い風を受けていた。しかし、どちらも業界全体で見れば、企業ごとの明暗がはっきりと出た。ダイヤモンド編集部では市場環境が激変した16業界について、それぞれ倒産危険度ランキングを作成した。特集『選別開始!倒産危険度ランキング2022』(全20回以上)の#11で取り上げるのは陸運・海運業界。21社が“危険水域”に入った。(ダイヤモンド編集部 山本 輝)

世界遺産登録に沸く佐渡島で
地元の“足”の担い手が上場廃止に

「佐渡島の金山」を世界文化遺産に――。観光の起爆剤を手に入れようと、地元関係者がこぞって期待を寄せる佐渡金山だが、その登録を巡る動きは混乱を極めている。

 政府が佐渡島の金山を国連教育科学文化機関(ユネスコ)に推薦したのが、今年2月のことだ。しかし、その直後から韓国が「朝鮮半島出身者が強制労働させられていた」と反発したり、夏には書類不備によりユネスコから推薦書の再提出を求められたりするなど、一筋縄ではいかない様子だ。

 そして、そんな佐渡島の金山を巡る混乱を“予言”するかのように、地元民にとって衝撃的なニュースがもう一件報じられた。

 2月、佐渡島と新潟を結ぶカーフェリーなどを運航する佐渡汽船が、上場廃止を決めたのだ。

 佐渡汽船の“懐事情”は極めて厳しかった。

 佐渡島の人口減だけでなく、新型コロナウイルスの感染拡大による観光客低迷の影響をもろに受け、旅客輸送人員は2019年度(12月期)の146万人から21年度には76万人と半減した。純利益は同期間に7.6億円の赤字から16億円の赤字へと悪化しており、21年度には2期連続の債務超過、上場廃止に係る猶予期間にも入っていた。

 もともと赤字体質で脆弱な財務状態が続いていたところに、コロナ禍という“荒波”が襲い掛かり、ついに“座礁”という運命をたどってしまったといえるだろう。

 佐渡汽船は、経営共創基盤を母体とするみちのりホールディングス(HD)から15億円の出資を受けて子会社となり、同社の下、株式市場から離れて経営基盤の立て直しを図る。

 みちのりHDは、茨城交通グループ、関東自動車グループなどを傘下に持ち、地方交通事業の経営支援を行う「救世主」として知られている。佐渡汽船でも、観光客向けのサービスのデジタル化やマーケティング、蓄積されたノウハウなどが活用できるというが、地方交通は地元民の生活に直結するだけに、その手腕に期待がかかる。

 コロナ禍が運送業にもたらした影響は甚大だ。

 そしてその明暗は、「旅客主体」なのか「貨物主体」なのかで、はっきりと分かれた。貨物主体の海運業界はコロナ禍に伴う世界的な海運需要やコンテナ不足の影響で、未曽有の好況を迎えていた。同じく陸運業界も在宅勤務や外出規制によるネットショッピングの増加で貨物需要増の追い風を受ける企業も出現した。

 だがそれに対し、旅客業の厳しさは言うまでもない。上記の佐渡汽船のみならず、人流制限によって収入の多くを失った事業者が苦境にあえいでいるのだ。

 今回、ダイヤモンド編集部は「陸運・海運」業界の倒産危険度ランキングを作成した。すると、地方交通の担い手ともいうべき企業が数多くランクイン。“危険水準”にある21社があぶり出される結果となった。

 なお、海運では一見好調と思われる“貨物主体”の企業でもワーストにランクインした企業がある。早速、次ページでその実名を見ていくとともに、そのカラクリを解説しよう。