選別開始!倒産危険度ランキング2022#31Photo:mfto/gettyimages

コロナ禍で大打撃を受けたのがホテル業界だ。大阪を代表するホテルグループであるロイヤルホテルも例外ではなく、厳しい市場環境が続く。特集『選別開始!倒産危険度ランキング2022』(全31回)の最終回では、ワースト20位にランクインした同社の蔭山秀一社長に現状と打開策を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 山本 輝)

業績悪化は個社の戦略の失敗ではない
業界の損失額は49年分の純利益と一緒

――コロナ禍の影響でホテル業界は軒並み打撃を受けています。2022年3月期は48億円の最終赤字となり苦境が続きますが、今の事業環境についての感触は?

 まず前提として、今回の業績悪化が個社の戦略の失敗によるものではないという点は認識してもらいたいです。われわれが今一番気にしているのは、従業員のモチベーション。観光産業を何十年と支えてきた中で、何も特筆すべき失点はないのに、コロナ禍によって事業環境が悪化したということは理解してほしい。

 宿泊については、政府による全国旅行支援などの政策があったものの、ビジネスの人流がまだ戻ってきていない状態です。やはり出張した先で懇親会などがないとビジネスの宿泊需要は増えづらいことに加え、大企業ほど宴会にはまだ抑制的です。

 そもそも当社は、客室(宿泊)による売り上げは全体の4分の1にすぎず、宴会やレストランによる売り上げが大きい。宴会需要と出張宿泊は、表裏一体なところがあり、その点でもビジネス人流の復活は重要です。

――ホテルの稼働率自体はどれくらい回復しているのですか。

 大体足元で7割前後です。ただしホテルというのは、元々非常に利幅が薄い商売です。設備型の産業だから損益分岐点がそれなりに高い。なので、仮に稼働率が8割に戻ったとしても、利益が十分に出るのかといえば、なかなかしんどいところです。

 日本ホテル協会の集計によると、20年度と21年度のコロナ禍によって協会員ホテルが被った損失の合計額は、コロナ禍前の49年分の純利益と一緒。今後50年近くかけてこの累積した損失を取り戻していくというイメージですから、厳しいものがあります。

コロナ禍によるホテル業界への打撃の深刻度を訴えた蔭山社長。次ページでは、黒字化復活への試金石となるポイントや、懸念される資金繰りについての対策を明かしてもらった。