日本郵船は2022年3月期、経常利益、最終利益共に過去最高の9300億円を見込む。コンテナ船だけでなく、その他貨物船や航空運送、物流事業も好業績だった。莫大な利益を一体、どのような投資に振り向けるのか。特集『海運バブル “コロナ最高益”の不安』(全8回)の#6では、脱炭素への取り組みや、重要な取引先である造船業界の課題、株主還元のあり方まで、長澤仁志社長に詳しく聞いた。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)
面会したメーカー社長の「首の皮一枚」
コンテナ運賃高騰は今年半ばまで継続
――コンテナ輸送が世界的に混乱し、日本の海運大手3社は過去最高益となりました。3社がコンテナ事業を切り出したOcean Network Express(ONE)の大株主として、コンテナ輸送の現状と混乱収束の見通しを教えてください。
まず、コンテナ輸送の混乱によって多くの方々に迷惑を掛けています。物流はわれわれの使命だと考えていますが、米国内の人手不足で港湾での荷さばきが遅れるといった要因が大きく、ONEの努力の限界を超えています。
年明け、私はいろいろな会社の方にお目にかかる機会がありましたが、皆さん非常に困っておられる。あるメーカーの社長さんには「米国の工場が首の皮一枚の状態で稼働している」と言われました。本当に心苦しく思っています。
日本には外航コンテナ航路がONEしかなく、結果として取り扱う荷物が増え、好業績につながりましたが、早く平時に戻ってほしいと考えています。
今後については、明確な判断材料を持ち合わせていませんが、デンマークの世界最大手のコンテナ船会社のマースクは、今年1~6月は運賃が高い状況が続き、トータルで前年並みだとの予測を出しています。