電子商取引(Eコマース)大手のアマゾンでは、元社員が裁判を起こすなど、人事制度に不満を抱く社員が少なくない。どのような運用がなされているのか。特集『ステルスリストラ 気付けばあなたも』(全10回)の#3では、退職勧奨を受けたある元社員が重い口を開き、その全貌を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
会社から渡された書類に
「Leave Amazon」の選択肢
「最終的に自ら辞めましたが、アマゾンが私にした扱いには全く納得していません」
日本のアマゾン(アマゾンジャパン)で働いていた元社員は、怒気を帯びた顔つきで自身の経験を振り返った。
この元社員はある日、会社側から書類を渡された。その書類には「業務改善に関する指導、アドバイス、当人に対するCall Out(非難)についてフィードバックしたが、期待したレベルの改善は見られなかった」などと記載され、会社の期待に対して不足している点が箇条書きされていた。
さらに「Pivot Entry Form」なる書類も渡された。Pivotとはアマゾン社内で用いられているプログラム名であり、Pivot Entry Formとは上司が部下を既にPivotへ入れたことを示す書類である(次ページに実物写真掲載)。
書類には今後自身が取れるPivot Options(Pivot上の選択肢)が大きく二つ挙げられていた。一つは退職勧奨に当たる「Leave Amazon(アマゾンを去る)」。もう一つは「Improve at Amazon(業務改善計画、いわゆるPIP)」だ。
退職を選択した場合に受け取れる「Pivot payment」なる補償金(いわゆる退職パッケージ)の額も記されていた。
示された額は一つではなかった。
「これじゃあ『早く辞めた方がお得だから早く辞めろ』と言っているのと同じじゃないか」。元社員は憤った。
次ページでは、ローパフォーマーの評価を受けた社員に対する人事の仕組み、そして「早く辞めた方がお得」と言わしめる退職パッケージの詳細を明らかにする。