中国のデジタル化、ゼロコロナ
……いろいろ考えさせられた

「妹と交代で買い物に出かけましたが、私は数年に一度しか中国に帰国していないので、中国での生活にとても不慣れです。(中国の決済機能である)ウィーチャットペイなども使えないので、戸惑うことばかりでした。でも、長い間離れていた父親とは、積もる話ができた。それだけはよかったと思いますが、いろいろと考えさせられることもありました。

 たとえば、私の実家がある都市は人口が500万人以上の大都市ですが、デジタルは非常に発達しているのに生活しづらい都市であると感じました。日本から中国を見ているとAIを駆使するなどデジタルが高度に発達していてすごいなと感じます。私もそう思っていましたが、デジタルが発達していても、それを管理できていない面が大きい。たとえば、父親が入院するとき、受付で個人情報を記入した後、診察室でも同じものを記入。入院の際にも記入しました。同じものを3度記入する意味がわからない。デジタルは発達していても、制度は不便。つまり、人に優しい仕組みにはなっていないと感じました」

 数年ぶりに帰国した中国で、厳しいゼロコロナの洗礼を浴びた男性。情報統制も話には聞いていたが、実際に自分たちが経験したような隔離の実態は中国ではほとんど報道されることがないということも体験した。

「日本で見る報道だけでは分からない。中国のゼロコロナがいかに人々を苦しめているのかを知りました。日本に帰ってから1カ月になりますが、今も心は晴れません。自分は自由な日本に戻りましたが、1日も早くゼロコロナをやめてほしいと願うばかりです」

 習近平政権が今も堅持するゼロコロナ政策。厳しい隔離や頻繁なPCR検査、移動の不自由は現在も続いている。政府はゼロコロナのプラス面を強調し、その成功を自画自賛しているが、この男性の話を聞いていて、多くの人々の心に消えない傷を負わせているのだということを、改めて感じさせられた。