「私はなぜこんなに生きづらいんだろう」「なぜあの人はあんなことを言うのだろう」。自分と他人の心について知りたいと思うことはないだろうか。そんな人におすすめなのが、『こころの葛藤はすべて私の味方だ。だ。著者の精神科医のチョン・ドオン氏は精神科、神経科、睡眠医学の専門医として各種メディアで韓国の名医に選ばれている。本書「心の勉強をしたい人が最初に読むべき本」「カウンセリングや癒しの効果がある」「ネガティブな自分まで受け入れられるようになる」などの感想が多数寄せられている。本書の原著である『フロイトの椅子』は韓国の人気女性アイドルグループ・少女時代のソヒョン氏も愛読しているベストセラー。ソヒョン氏は「難しすぎないので、いつもそばに置いて読みながら心をコントロールしています」と推薦の言葉を寄せている。あたかも実際に精神分析を受けているかのように、自分の本心を探り、心の傷を癒すヒントをくれる1冊。今回は日本版の刊行を記念して、本書から特別に一部抜粋・再構成して紹介する。

【精神科医が教える】ひどい憂うつ感から抜け出すたった1つの方法Photo: Adobe Stock
私はいつも自分の外に
強さや自信を求めていた。
─アンナ・フロイト

深い井戸の中にいるような気分

「先が見えない。すっかり落ちるところまで落ちてしまった。指先すら動かしたくない。希望が持てない。人生に価値を見出せない。毎日を生きるのが苦痛だ。世の中は不公平だ。腹が立つ」
憂うつとはこんな気分です。とても居心地の悪い感情です。

こんな気分から抜け出そうと全力でもがいてみるものの、うまくいきません。
まるでアリ地獄にはまったかのようです。

つらい日々を生きていると、井戸に落ちたような気分になります。
憂うつな人には何もかもがネガティブに見えます。

井戸の中から見上げる空は500円玉の大きさで、井戸の壁はコケに覆われてぬるぬるしています。
助けを求めたいけれど恥ずかしい気もして、どうしたらいいのかわかりません。

うつ病と診断されるほどのひどい憂うつ感は、精神科専門医の助けを借りて治療をすべきです。
意志の力だけでは、重いうつ病を解決することはできません。
しかし、治せる病気です。
ひとりでなんとかしようとするのではなく、病院で治療を受けてください。

現代精神医学では、うつ病を脳の生化学的なバランスが崩れた病気ととらえています。
そのため、これを正常に戻す抗うつ剤の投与が効果的な治療法として確立しました。

しかし、薬には「なぜ今、うつ病を発症したのか」という意味を見つける役割は果たせません。
憂うつになった理由が自分でもわからないなら、精神分析家の助けが必要です。

憂うつであることを恥ずかしがらないでください。
憂うつになるのは、よくある症状です。
早めに治療を受ければ、すぐによくなります。

問題は、ひとたび憂うつの沼にはまってしまうと、病院で治療を受けたり、周りの人に助けを求めたりするのが、とんでもなくハードルの高いことのように感じられる点です。

精神療法や精神分析を受けて井戸の外に出てくると、今まで自分がいた井戸は決して深くなかったことがわかります。

せいぜい人の背丈ぐらいの深さで、だいぶ前から干上がっていて溺れる心配もありません。
元気な人であれば、すぐに上がってくることができるほどです。

こんな井戸にはまって助けを求めている人がいるなんて、誰も想像できなかったことでしょう。
憂うつ感に悩まされていた本人だけが、深い井戸だと思い込んでいたのです。

(本稿は、チョン・ドオン著 藤田麗子訳『こころの葛藤はすべて自分の味方だ。 「本当の自分」を見つけて癒すフロイトの教え』から一部抜粋・再構成したものです)